“フィリピンで最も有名な日本人”の逆輸入へ-。フィリピンの国民的リアリティー番組「Pinoy Big Brother(PBB)」に出演し、現地で知らぬ者はないタレントで実業家のFumiya(27)。SNSの総フォロワー数は500万人を超となり、日本でもこの4月にフィリピン文化を前面に打ち出すカフェを立ち上げる。極貧生活から一気にスターダムをかけあがったFumiyaはこのほど、日刊スポーツのインタビューに応じ、「フィリピンと日本の懸け橋になりたい」と思いを全3回にわたってお届けします。

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スーパーマーケットを経営していた父親の「人脈が大切」という言葉に感銘を受けて、高校、専門学校卒業後、東京の一流ホテルでベルマンになった。有名な社長らの荷物をもって部屋まで案内する際に、タイミングを見て「経営者になりたいので、アドバイスをください」と話しかけ続けたという。

新人ホテルマンはなかなか相手にされなかった。だが京都でエステサロンを経営する女性社長の言葉が転機になった。

「いつも通り『僕、経営者になりたいんです』っていったら、目をバッて開いて、『あんた、経営者になるのは簡単だよ。お金があって会社登記したら社長になれる。あなたに足りないのは、数字を入れること。二千何年、何月何日何時何分に、ニューヨークのどこどこの何階のビルで、何のミーティングをしながら、そこには社員さんが何人いて、その時にコーヒーを飲んでいて、そのコーヒーはスターバックスのコーヒーで、そこには砂糖が入っていないかどうか、そこまで考えろ。想像しろ』って。『5年後そうなるとしたら、4年後何するの、3年後何するの、来年何するの、あんた今何するの?』て言わわれて衝撃受けて。『5年後の2020年、あなたは何をするんですか』て言われて。『東京オリンピックです』ってこたえたら。『違う、ドバイで万博がある。これからは世界に目を向ける。京都からドバイに出て世界で活躍する』っていわれたんです。かっこいい、この人って思って、『僕も世界に出ます。2020年世界で会いましょうよ』ってえらそうにいって、2020年に海外に出るってきめたんです」。

16年に、「世界でアパレルブランドをたちあげる」と英語圏での留学を決意し、資金の関係からフィリピンに留学先を決めた。家族からは心配されたが「固定概念で決めるのはよくない。あぶないかあぶなくないかは自分の目で見てくる」と反対を押し切った。生存確認のために始めたのが「YouTube」だった。フィリピンの不思議な食べ物や文化にチャレンジする姿が好評を博した。「おれはここでフィリピンに特化して頑張れば、フィリピンのヒカキンになれるかもしれないと。フィリピンで有名な日本人はいない。NO・1になった方が、アパレルも立ち上げられる」と、1カ月で語学学校をやめて動画制作に注力した。5カ月でチャンネル登録者数が1万人まで増えたが、貯金が底をつき、日本への帰国を余儀なくされた。

家賃5万円の埼玉のボロアパートで、動画制作を続けた。YouTube収入は7万円だったが、「バイトしたら負け」というルールを自分に課した。「カツカツで、1日パスタ1食を塩だけかけて食べるみたいな生活。たまに電気止まっちゃったり。髪の毛切るお金や洋服買うお金もなくて。バイトする時間があったらコンテンツ1個作る。精神的につらかった。誰にも会わない生活で結構しんどかった」。ストイックな生活とは裏腹に登録者数は伸び悩んだ。

そのような生活を8カ月ほど続けていた18年のある日、東京・日比谷公園でフィリピンのイベントがあることを知った。「会う人会う人に、セブ島でイベントやりたいっていっていた。いろんな人に言いまくっていたら、セブパシフィック航空の偉いおばちゃんが出てきて、なんか面白いって言われて航空券とホテルと、現地のショッピングモールをタダで貸してくれたんですよ」。交渉の翌週にイベント開催する約束を取り付けた。

単身セブ島に飛ぶと、スタッフを誰も連れて行かなかったことに現地スタッフに驚かれた。イベント当日には、自ら客席の設営などを行った。「会場の裏に隠れて、人来るのかなって思いながら出たら200人もいたんです。僕の呼び掛けに(SNSの)フォロワーたちが来てくれました。びっくりしました。僕が並べた椅子に座っている。この時、『日本人で初めてだ』って(言われて)。それがうれしくてうれしくて」と笑顔をほころばせた。【佐藤成】(つづく)

【連載2】24時間監視のサバイバル乗り越え一気に大スターも「人としてもダメになっていた」

◆Fumiya(本名・三海郁弥)1995年(平7)3月19日、静岡・浜松市生まれ。フィリピンで俳優、歌手、モデルとして活躍。21年、日本テレビ系「マツコ会議」、Abemaドラマ「私が獣になった夜」など出演。昨年にはNewsweek日本版「世界が尊敬する日本人100人」選出。今年2月にアジア6カ国のSNS市場で活躍するクリエーターやインフルエンサーを表彰する「2021 WORLD CREATOR AWARD」受賞。浜松市の観光大使も務める。170センチ。血液型A。