“フィリピンで最も有名な日本人”の逆輸入へ-。フィリピンの国民的リアリティー番組「Pinoy Big Brother(PBB)」に出演し、現地で知らぬ者はないタレントで実業家のFumiya(27)。SNSの総フォロワー数は500万人を超となり、日本でもこの4月にフィリピン文化を前面に打ち出すカフェを立ち上げる。極貧生活から一気にスターダムをかけあがったFumiyaはこのほど、日刊スポーツのインタビューに応じ、「フィリピンと日本の懸け橋になりたい」と思いを語りました。連載の第2回です。

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18年にフィリピン・セブ島でイベントを成功させ帰国しようとすると、現地テレビ局からインスタグラムで連絡があったという。「『セブ島でオーディションやっているからこない?』って。たまたま隣のモールだったので、動画のいいネタになるかっていったら、オーディション受ける人が3万人いました。謎のオーディションさせられて、踊らされて。なんだか意味分からないけどやって、いい思い出だなって」。

帰国して再び極貧生活を続けていると、オーディションから4カ月後のクリスマスイブ、知らぬフィリピン人から電話が入った。「なんだこいつって思ってでたら、『とにかくフィリピンに来い。3日後に来い。来ないと困る』っていわれました」。アパートを解約するなど調整し、1週間後の2019年元日にフィリピンへ渡った。

「ウエルカム Fumiya!」とスタッフに迎え入れられるも、電子機器を取り上げられ、目隠し、ヘッドホンを付けて車に乗せられた。窓も時計もテレビも何もない部屋に5日間閉じこめられた。「番組の性質上、適性を見るのと、1回精神を壊すっていう目的だったみたいです。日本じゃできない番組。あっちでは国民的番組のオーディションで、世界10カ国以上、10万人が参加していて、当時やっていたNiziプロジェクトの10倍。すごいオーディションに受かっていました(笑い)」。

自動で動くカメラで、24時間監視されて、トイレもシャワーも全部撮られた。一軒家に男女それぞれ4人ずつが暮らし、日々の課題クリアを目指すサバイバル番組。テレビでは1日2回放送で、朝の映像を夕方に、夕方までに起きたことを夜に放送するスタイル。フェイスブックのライブ配信も行われたという。「ライフルを早く組み立てたりとか、(その後)バンバン撃つとか。チャレンジ成功するとお金がもらえて、それで食材が買える。チャレンジ失敗すると米しか食べられない。裏で嫌いなやつにポイントを入れあって、みんな仲良いんだけど落とし合う。最後は視聴者投票で決まります」。

熾烈(しれつ)なサバイバルの上、ネットは使えず、情報は遮断されたが、視聴者には浸透。フィリピンで一躍人気者となった。約4カ月間の番組出演中、1度も更新していないYouTubeチャンネルの登録者数は135万人まで増えていた。2019年上半期チャンネル登録者数増加率は、米津玄師に次ぐ、日本3位だった。

サバイバルに成功し、翌2020年。アパレルブランドを立ち上げる当初の夢を実現する絶好の機会と思い、帰国しようとすると、関係者から「お前、何言ってんだよ、5年間スケジュール埋まっているよ」と言われた。歌もダンスも演技も未経験ながら、テレビのレギュラー番組が4本決まっていたほか、フィリピン、香港、台湾、シンガポールでのコンサート、映画出演、写真集発売など、勝手に仕事が決まっていた。「いや、『やりたい』って言ってねーし」という思いとは裏腹に、平均睡眠時間3時間のスター生活が始まった。“史上最速”のソロコンサート記録や“史上最速”レギュラー番組の記録を樹立した。ライブ2日前に8曲覚えさせられることもあった。外出時、ボディーガードが3人つき、どこへいっても熱狂的に迎え入れられた。「本気を出したら何でもできるんだって思いました」と振り返った。

ただ、当時の心境は、「全然うれしくなかったです。この時期が一番、人としてもダメになっていた。感覚がおかしくなった。寝ていない、仕事している、テレビ付けたら自分がいる、レストランにいっても声かけられる。自由がなくてずっと監禁されているみたいな。まあ楽しいんですけど、こなす日々、言われたことやっている日々でした」と懐かしんだ。

日本で例えるなら「M-1グランプリ」のようなものだろうか。一気にスターになったため、気持ちが追いつかなかった。「寝てないのもあってずっと夢の感覚なんです。人と話しているのに人と話している感覚がなくなる。夢の中みたいな。非日常すぎて。これ本当に現実なのか、みたいな」。【佐藤成】(つづく)

【連載1】女性社長の言葉で世界進出決意 極貧生活の先にフィリピンでのイベント話が入り…

◆Fumiya(本名:三海郁弥)1995年(平7)3月19日、静岡・浜松市生まれ。フィリピンで俳優、歌手、モデルとして活躍。21年、日本テレビ系「マツコ会議」、Abemaドラマ「私が獣になった夜」など出演。昨年にはNewsweek日本版「世界が尊敬する日本人100人」選出。今年2月にアジア6カ国のSNS市場で活躍するクリエーターやインフルエンサーを表彰する「2021 WORLD CREATOR AWARD」受賞。浜松市の観光大使も務める。170センチ。血液型A。