河瀬直美監督(52)が24日、都内で21年の東京オリンピック(五輪)公式記録映画の製作報告会見を開いた。席上で、舞台に立つアスリートを中心とした五輪関係者たちを描いた「東京2020 SIDE:A」と、大会関係者、一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートたちを描いた「-SIDE:B」と、異なる視点からの2作品で製作し6月3、24日に連続公開すると発表した。

質疑応答の中で、21年にNHK BS1で放送されたBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」の字幕問題について、見解を求める質問が出た。NHKは昨年12月放送の同番組において、ある男性が五輪反対デモに金をもらい動員されたと裏付けのないまま字幕を付けて放送した。その後、男性への聞き取りではデモに参加した事実確認がとれず、字幕を「不確かな内容」としてきたが、2月10日の会見で「字幕の内容は誤りだったと判断した」と調査結果を報告。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会(小町谷育子委員長)は「放送倫理違反の疑いがある」として審議入りを決めた。

河瀬監督は「あの番組に関して、さまざまな議論がなされ『河瀬直美が見つめた』ということになっているので河瀬直美の名前が、たくさん出た。ある意味、注目され、発言の機会を持たないのかというようなお話もあったと思う。ただ、BPOの審議に入っているということもあり、詳しいお話は、ここの場所でするのは適さない」と口にした。その上で「本当に、真摯(しんし)に私と、私のスタッフたちが、この映画に取り組んでいた姿を、ドキュメントしていただいていたと信じていたので、事実ではないことを表現されていたことは残念でならない」と語った。

さらに「反対派の意見を、しっかり採り入れて映画を描くべきだといったことは、私たちスタッフの間でも共通認識で、そのことに対してたくさんの取材を重ねた。その中で、あのような事実とは違うような描き方をテレビで、しかもNHKでされたことに、本当に自分にとっては信じ難いことだったので驚きとともに残念という形です」と語った。