第35東京国際映画祭が24日、開幕した。開会式に先立って、21年から新設された「Amazon Prime Videoテイクワン賞」トークイベントが同日午後、東京・TOHOシネマズシャンテで行われ、審査委員長の行定勲監督(54)と、初代の同賞に「日曜日、凪」で輝いた金允洙監督(キム・ユンス=36)が登壇した。

Amazon Prime Videoテイクワン賞は、東京国際映画祭が、さらなる才能の発掘を目指してAmazonプライムビデオの協賛を得て新設したもの。これまで商業映画の監督、脚本、プロデューサーを担当したことがない日本在住の映画作家の15分以内の短編作品が対象で、受賞者には、賞金100万円とAmazonスタジオでの長編映画製作を模索する機会が提供される。

席上で、Amazonプライムビデオの児玉隆志プライム・ビデオジャパンカントリーマネジャー、金監督から複数、出てきた企画の中で、1本に関してはAmazonスタジオで脚本の執筆まで合意したことを明らかにした。児玉氏は「金監督は素晴らしい才能を持っていると信じていますが、長編を製作されていないのは、世界で見ても珍しい試み。企画開発、脚本開発、キャスティングがあって、製作会議で合意したものが製作される。多くのハードルがあると思う。せっかくの出会いですので、何としても作品として結実していただきたい。一緒に頑張れればと思います」と金監督の作品が完成することを期待した。

金監督は「ちょうど1年前、受賞してAmazonスタジオに提案させていただいたのが1月。ひとまず、こうやってスタートに立てたような気持ちでありがたく思います」と受賞から1年の経緯を振り返った。その上で、脚本開発が通ったことについて「これまでは、普通の自主映画を作ってきて、僕がやろうとしたものを作っていて、企画が通らないことがあり得なかった。Amazonスタジオと企画を開発していくにあたって、企画を通して完成させるのが大変だと聞いていた。身をもって、そういうフェイズに入る不安と、自分がどうクリアしていくかのワクワク感がある。6分の好奇心と1分の恐怖がある、という感じですね」と率直な思いを語った。

行定監督は「才能が評価を得るのに、10年くらいかかる。今、1番、良い時に芽を出させることをAmazonはやりたいんじゃないか」と、Amazonプライムビデオが東京国際映画祭と協賛する狙いを推し量った。その上で「10年分、苦労すると処世術的にも慣れてくるが(作家にも)ビビットに作ることが出来る時期がある。この人に、先を撮らせたいか、というのが今回の審査の要素で強くないと、若い才能をうまく生かせられない。逆に気楽に審査できないな、と」と、ビビットな感性を救い上げる子、重要なタスクが審査には伴うと強調した。

金監督は、トークイベントの最後に、客席に座っている今年のファイナリストへのエールを求められると「あんまり、後に続いて欲しくないのが本音。ほんの1年前、あそこに座ってみていたので。脚本の開発に進んだだけ、と言ったら違うかも知れないけど…ほぼ何も変わらないくらいの気持ちでいる」と口にして場内の笑いを誘った。その上で「ファイナリストに残ったこともありがたかったし、たまたま受賞しただけ。ただ、今後のモチベーションに〓(繋の車の下に凵)がる。去年の東京国際映画祭、終わった後に有楽町、日比谷に立ち止まるとドキドキする。それが今後の創作に影響があると思う。平常心で…もし受賞しなくても多分、来年もあると思うので頑張りましょう」と語った。