米ツイッターを買収して経営権を握った米起業家のイーロン・マスク氏(51)が、米下院議長を務めるナンシー・ペロシ議員の夫が自宅で襲われた事件を巡り、根拠のない陰謀論をツイッターで共有していたことが物議を醸している。

マスク氏は先月30日、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官の投稿に返信する形で、「わずかばかりだが、この話には、目に見える以上のことが隠されているかもしれない」とコメントを添え、陰謀論を並べた記事のリンクを投稿。その後、この内容が問題視される可能性に気がついたのか、数時間以内に投稿を削除した。

ペロシ議長の夫は先月28日、米カリフォルニア州サンフランシスコの自宅にいたところを、ハンマーを持った男に押し入られ、頭蓋骨を骨折する大けがを負った。病院で手当てを受けて回復に向かっているというが、逮捕された容疑者は襲撃時に「ナンシーはどこだ?」と叫んでいたといい、狙いはペロシ議長だったことが分かっている。

その後の捜査で容疑者は、Qアノンや反新型コロナウイルス、反ユダヤ主義などの複数の陰謀論に傾倒していたことが分かっており、クリントン氏は「共和党とその代弁者たちが、憎悪と狂った陰謀論を広めている」と批判するツイートをしていた。

マスク氏がリンクをツイートしたサイトは、2016年の大統領選で民主党候補だったクリントン氏は「死亡していて替え玉」だとの偽情報を流していたことで知られると、米ロサンゼルス・タイムズ紙などが伝えている。マスク氏の投稿には、数時間の間に10万件の「いいね」が寄せられていたという。マスク氏は、この一件を報じたニューヨーク・タイムズ紙に対し、「(記事は)間違いです。私はニューヨーク・タイムズへのリンクはツイートしていません」と応戦している。

「言論の自由」を公言しているマスク氏だが、ツイッターを買収した後、「コンテンツモデレーション(投稿監視)評議会を設置する」と発表し、投稿内容やアカウント凍結解除に関する方針を検討することを明かしていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)