新設された日刊スポーツの会員サイト「日刊スポーツ・プレミアム」向けのインタビューで博多華丸・大吉にインタビューする機会に恵まれた。地元福岡への愛も忘れず、東京で地道に地位を築いてきた2人。その礎にはにじみ出る謙虚な人柄があると強く感じた。

福岡吉本1期生としてデビューし、2005年に東京吉本へ移籍するまで地元で約15年活動した。今年で東京での活動期間は17年。「東京で15年活動したら福岡に戻る」と語ったこともあった。華丸は「キャリアは東京の方が長くなっちゃったけど、来たのは35歳の時なので。やっぱり70歳まではまだ追い越せないですね」と笑い「でも、2週に1回ぐらいで(福岡に)戻っているし、何かと関わる人も多いので、昔からそう変わってないですね」と話した。

福岡でもテレビ西日本「華丸大吉のなんしようと?」などのレギュラー番組を持ち、ひんぱんに足を運んでいる。東京で、全国の舞台で活躍する姿を福岡県民も心待ちにしていると説く。大吉は「福岡の方に応援されるには、実はこれが最低条件でもある。いくら好きだからって福岡に帰ったら、多分1年後にはみんな相手しなくなると。このペースでやっていければいいかなと思いますけど、まさかここまで(東京で)受け入れられると思わなかったです。不思議ですね本当に」。

05年の上京当初は苦労もあった。M-1グランプリなどの賞レースは基本的に若手にしか出場権が与えられない。華丸が上京直後に出演して名を広める一因となったフジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」内のコーナー「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は、キャリア不問ゆえに飛びついた企画だった。

華丸は「苦肉の策でつかんだ部分もありました。(第6回、第7回と連覇し)十分でしたね。もう福岡に帰る準備してましたから(笑い)」と振り返り「そもそも人のものまねですからね。本人がいらっしゃるわけですから。いつまでもやれるもんじゃないと思っていましたし。福岡に戻る錦を飾ったような感じだったので、もう十分だなとその時は思いました。ゴールテープ切ったぐらいの感じです。本当はスタートラインだったんですけど」。

そこからの東京での活躍は言うまでもない。「THE MANZAI2014」を制するなどし、18年からはNHKの朝の情報番組「あさイチ」のキャスターに抜てきされた。華丸は「ずっと積み重ねて活動する、ポイントカードを押し続けてる感じ」と表現する。「THE MANZAI、IPPONグランプリ、あさイチもそうですし、『そろそろ飽きられるかな』ぐらいの時に、何かしらある。延長、再延長、いい感じに免許切り替えしてるみたいな。もう我々は芸歴的には高齢ドライバー。めぐり合わせですね」。

大吉は2014年~2015年にかけてピンで出演したテレビ東京系の生放送番組「トーキョーライブ22時」での経験をターニングポイントに挙げた。テレ東のバナナのマスコットキャラクター、ナナナの声を担当。「アメトークのアメトーク大賞、流行語大賞もとって、そこそこ売れてたんですけど、ジャニーズの方々を相手にナナナの声をやって(ジャニーズファンらの中で)『あいつ誰だ?』みたいになって。僕らが住んでいるお笑い大陸とは全く違うジャニーズ大陸っていうのがあるんだと思って。世間の評価はわかんないですけど、そこで僕の意識が変わりましたね」。

お笑いにあまり興味のない人たちがまだまだ大勢いることを痛感したといい「お笑い好きじゃない人が今の華丸さんの発言を聞いたらどう思うかなとか、良い悪いではなくて、そういうのを考えるようになりました」と話した。

今ではNHKの朝の顔でもある。井ノ原快彦(当時V6)と有働由美子アナウンサーのあとを継いで「あさイチ」2代目キャスターに就任してまもなく5年。大吉は「最初は話が大きすぎて全然ピンとこなかったですね。レギュラー番組増えるんだぐらいで引き受けて、前日にゾッとしました」と振り返った。

前メンバーの最終回では引き継ぎ会議で泣く大勢のスタッフを目にした。「300人ぐらいスタッフさんがいて『しまった』と思いました」。「トーキョーライブ22時」で感じたお笑い畑ではない人たちからの反響も大きいといい「ふとしたときにこれ全部夢じゃないかなと思ってます。なので、あさイチ全部終わりますって言われても、そりゃそうよねって受け入れる気持ちですね」。これには華丸も「(NHKに)何の口答えもしません。逆に長すぎてすいませんっていうぐらいやらせてもらっているので」とうなずいていた。

活躍の場は広がっているが、ベースは本業の漫才であることも強調した。キャリアを重ねても、謙虚な姿勢は変わらない。華丸は「テレビにしろ舞台にしろ、望まれている限りはその期待に応えたいというスタンスはまだ変わってないです」といい、大吉も「同じく、あれがやりたいこれがやりたいとかはなくて、きた仕事は全部やらせていただきますというスタンスです」と力を込めた。

やり残していることもまだまだあるという。福岡のお笑い界について、華丸は「劇場とかは僕らがやっていた頃よりもすごく良くなっているんですけど、やっぱりいまいち盛り上がってないんです」と切り出し「それは実はずっと見て見ぬふりしているところもあって。多少、責任を感じてるんですよね。やっぱり福岡吉本の出身なので、何とかしてあげたいなっていうのはずっと感じでいます」と語った。

大吉も「(吉本の)47都道府県住みます芸人とかが全国にいるんですけど、その子らがちょっとでも自由に出られるようにしたいですね。僕らも元住みます芸人ですから」と笑い、「会社自体も社員さんが若返って、なかなか僕らより上の社歴の人がいない。僕らが知ってるいろいろなことは責任を持って教えていきたいなと思っています」と決意を込めた。

福岡出身の芸人は意外と多い。バカリズムや原口あきまさ、ロバート、カンニング竹山、バッドボーイズ、なかやまきんに君、バイキング小峠栄二ら…。そんな中でも2人の“福岡感”は際立っているように見える。大吉は「みんなも地元愛は強いですよ。(薄いのは)ロバートの馬場ちゃんぐらいです(笑い)」と笑わせ「僕らは博多って名乗っちゃっているので、しょうがないですよね。みんなから言わすと、ずるいかもしれないです」。華丸も「(自分たちと同じような)そんな子が出てきたらさらに燃えるかもしれないですね。今もすごいやっている子たちもいるので応援してます」とエールを込めた。【松尾幸之介】

◆博多華丸・大吉 博多華丸(はかた・はなまる)1970年(昭45)4月8日、福岡県福岡市出身。博多大吉(はかた・だいきち)1971年(昭46)3月10日、福岡県古賀市出身。福岡大で出会いコンビ結成。90年5月に福岡の吉本興業からデビューし、05年東京進出。俳優児玉清さんのものまねなどが得意の華丸はピンで出場したR-1ぐらんぷり2006で優勝。コンビでは14年「THE MANZAI」優勝。ツッコミの大吉は大のプロレスファンで、ウルトラマンやドラえもんにも詳しい。NHK「あさイチ」のほか、日本テレビ系「有吉ゼミ」などにレギュラー出演中。