春風亭一之輔は、一昨年亡くなった人間国宝の柳家小三治さんが認めた落語家である。

小三治さんが落語協会の会長になって初めて真打ちに昇進したのが一之輔だった。しかも21人抜き。小三治さんは「久々の本物。天与の才がある」とほめあげた。その期待は裏切られなかった。一之輔の落語会はすぐにチケットが売り切れる人気ぶりに、形容する言葉も「人間国宝が認めた落語家」から「チケットが最も取れない落語家」に変わった。

好奇心の人だった。16年に発行したAKB48公式10年史「涙は句読点」の企画で、東京・秋葉原のAKB劇場での観劇ルポをお願いした。年間900席の高座を務める超多忙なだけに、断られるかと思いきや、「いいですよ。こういう機会でもないと見られないからね」と快諾してくれた。

昨年、週刊誌に連載したコラムを文庫化した時、解説を書いたのが当時16歳の長男だった。コラムでは3人の子供たちもよく登場しており、編集者にしゃれで「うちの子でどうですか」と言ったら実現した。「笑点」ではふてぶてしいキャラを前面に出すだろうけれど、本当は家族を大切にする心優しい人でもある。【林尚之】

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