米アカデミー賞4冠を獲得した、19年の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を日本で舞台化する「パラサイト」の上演にあたり、脚本も手がけた原作者でもあるポン・ジュノ監督(53)と、主演のソン・ガンホ(56)が、舞台版の台本・演出を手がける脚本・演出家の鄭義信氏(65)と日本の俳優陣にコメントを寄せ、エールを送った。

ポン・ジュノ監督 映画「パラサイト 半地下の家族」が日本で舞台化されることがとてもうれしく、楽しみです。この作品は、裕福な家庭と貧しい家庭が、相反する場所で紡ぎ出す密度の高い人間ドラマです。故に私も当初は戯曲として構想した作品です。俳優の生き生きとしたまなざし、息遣い、そして汗をジカに感じてもらえる舞台版「パラサイト」で、再び観客に出会えることは至極の喜びです。演出の鄭義信先生の、長年のファンとして、傑作「焼肉ドラゴン」を観劇した際に、スタンディングオベーションで拍手を送った記憶が今もよみがえります。加えて、日本を代表する最高の製作陣と俳優たちが集結してくれたことに、私の期待は、さらに膨らんでいます。「パラサイト」の公演に心からの祝辞と感謝の気持ちをお伝えいたします。

ソン・ガンホ 演劇の開幕を心からお祝い申し上げます。個人的には最高の演出家と俳優陣が集まったと聞き、とても光栄に思います。映画とは違う立体感や臨場感、そして舞台の圧倒的なエネルギーが期待されます。多くの観客の熱気に包まれる素晴らしい公演になることを切に願っています。

舞台版「パラサイト」は、劇中の舞台を映画版の韓国・ソウルから、90年代の関西の、堤防の下にある集落に移して描く。映画版で描かれた、半地下に住むキム家に当たる家族・金田家は、陽がささないトタン屋根の集落で靴作りで生計を立てており、古田新太(57)宮沢氷魚(28)伊藤沙莉(28)江口のりこ(42)が演じる。キム家が寄生していく、高台の大豪邸に住むパク家に当たる家族・永井家の面々を山内圭哉(51)真木よう子(40)恒松祐里(24)、同家の家政婦をキムラ緑子(61)が演じる。また舞台オリジナルキャラクターを、みのすけ(57)が演じる。

鄭氏は、劇中の舞台を写した理由を「韓国だと、半地下の住宅がある地区は実際にある。日本に置き換えた場合、どこがいいかと考えた時、阪神・淡路大震災の際、三宮のあたりは壊滅状態になったけれど、北野のあたりは微動だにしなかった。そこで、映画の持っている貧富の差を、うまく表せないかな、と」と説明。そして「だから震災で全て失った、という形で考えています」と、1995年(平7)1月17日に発生した阪神・淡路大震災から着想した設定であると続けた。

公演は東京・THEATER MILANO-Zaは6月5日~7月2日まで全32回、大阪・新歌舞伎座は同7日~17日まで全13回、それぞれ上演。チケットは、19日正午からMY Bunkamuraで主催者先行チケット販売がスタート。26日午前11時からは、レプロエンタテインメント先行チケット販売特設サイトでも販売を開始する。

◆「パラサイト」 堤防の下にあるトタン屋根の集落。川の水位より低く一日中陽がささず、地上にありながら地下のような土地で金田文平(古田新太)の家族は家内手工業の靴作りで生計を立てて暮らしている。一方対称的な高台にある豪邸では、永井慎太郎(山内圭哉)、妻の千代子(真木よう子)、娘の繭子(恒松祐里)、ひきこもりの息子健太郎がベテラン家政婦の安田玉子(キムラ緑子)とともに暮らしている。文平の息子の純平(宮沢氷魚)は妹の美姫(伊藤沙莉)が偽造した大学の在籍証明を利用し、繭子の家庭教師としてアルバイトを始める。息子の健太郎のアートセラピーの教師として、美姫が、慎太郎の運転手や玉子がクビになるように仕向け、その後釜に、文平と妻の福子(江口のりこ)が…金田家は永井家に、次第に寄生していく。