坂本龍一さんは、亡くなる直前、東京・神宮外苑再開発計画に反対する思いを、共同通信の書面インタビューに語っていた。

同計画で、一帯の多くの樹木が伐採される予定であることを念頭に「現存する樹木を伐採することなく開発する方策を検討していただきたい」とつづり、「いったん現在の計画を中断し、再開発計画全体を持続可能で生物多様性を生かすよう見直してほしい」と訴えていた。

坂本さんは3月初旬、東京都の小池百合子都知事や永岡桂子文科相、関係自治体などに手紙を送り、「目の前の経済的利益のために貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではない」と記したとしていた。

小池氏は3月17日の会見で、坂本から手紙が送られたことを認めた上で「事業者でもある明治神宮にも送られた方がいいのではないか」と述べた。坂本さんは、この事業者や地権者の明治神宮に再考を求めた上で「各法人の皆さま、特に地権者である明治神宮にはぜひとも計画をご再考いただきたい」「都市計画のビジョンのもとに各地の開発の是非が判断される必要があるのではないか」と指摘。また「住民一人一人が住みたい場所のビジョンを持ち、共有されて都市の姿を形づくる。その先に政治家やリーダーを選ぶということがある」「知事が東京の都市計画にどんなビジョンを持つのか都民に広く知られるべきでは」とも問いかけていた。

坂本さんは、書面インタビューの中で「音楽制作も難しいほど気力・体力ともに減衰している。手紙を送る以上の発信や行動は難しい」と明かしていた。

計画をめぐっては、樹木の大量伐採や名所のイチョウ並木への影響のほか、神宮球場や秩父宮ラグビー場の建て替えにも異論が出ており、ラグビー元日本代表の平尾剛さんが反対署名を立ち上げるなど、スポーツ関係者にも反対する動きが出ている。地域住民らは2月末、都を相手取り、事業者への工事施工認可取り消しを求め東京地裁に提訴した。

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