脚本家の三谷幸喜氏(61)が23日、都内の帝国ホテルで、受賞した第41回(22年度)向田邦子賞の贈賞式に出席した。昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年1月9日~12月18日放送)で受賞した。

三谷氏は「向田邦子さんは僕にとって憧れであり、目標です。毎回、台本を書くときは必ず向田さんのシナリオを読み返して、どうすれば向田さんに近づくことができるだろうかと考えながら書いています」とあいさつした。

「鎌倉殿」の台本の中には向田作品のオマージュが含まれていることを明かした。「種を明かしますと、御家人たちのセリフは『寺内貫太郎一家』の石職人たちのセリフをいただいております。それから、政子と姉妹の会話も向田さんの『阿修羅のごとく』からのいただきです。本当に向田さんに感謝します」と話した。

また、過去に1度受賞を辞退したことを明かした。「この向田賞を取るということは向田邦子さんと市川森一さんに名前が並ぶというわけで、当時の僕はそれを自分なりに許せなかったというか。若輩者の自分がここで、こんな大賞をもらってはいけないと思って真剣に思いまして、本当にありがたいんですけど、ご辞退させてくださいというふうにお伝えしました」と打ち明けた。

第1回受賞者の故市川森一さんにも感謝した。「その時、審査員に市川さんがいらっしゃっていて、後で市川さんの奥さまに伺ったんですけど、市川さんは僕の作品をとても勧めてくださっていたみたいで。僕が辞退したのでとても残念なことになっていたので、今回こうやってまた一生懸命いただくことになりまして、多分、市川さんも喜んでくださっていると思うし、僕も市川さんにやっと恩返しができたかな、というふうに思っています」と語った。

北条義時役を演じた小栗旬からは「1982年が第1回、僕と全く同い年。今回は毎週、上がってくる台本が楽しみだった。本当に楽しみにできる1年4カ月だった。そこにベースとなる台本があって、上がってくる本、役者としては役者冥利(みょうり)に尽きる現場はなかった」とエールを送られた。

また、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、坂口健太郎、瀬戸康史、梶原善、菊地凛子、山本耕史、中川大志、佐藤B作、草笛光子、生田斗真、佐藤浩市、大泉洋が、祝福のスピーチを述べた。

◆向田邦子賞 故向田邦子さんのテレビドラマにおける偉業をしのび、その名前を長く放送回に記録するととともに、テレビドラマの脚本の質的向上、発展を期するのが狙い。対象は毎年4月1日から翌年3月31日までに、原則として放送されたテレビドラマの脚本を対象とし、その作家を表彰する。本賞は特製万年筆、副賞は300万円が贈られる。主催は向田邦子賞委員会