演歌歌手の三山ひろし(43)は浪曲師で演歌歌手の三波春夫さん(01年に77歳で死去)をすごく尊敬しています。1984年に三波さんが出版した「歌藝の天地」という自叙伝のことを「僕の教則本。何か迷いそうになったり忘れたなっていう時に本を開くと、生きる姿勢を思い出させてくれる」とまで言います。

自伝の中に「舞台に立っている側はいつも明るく、お客さまを照らし出すような心がけが大事だ」ということが書いてあり感銘を受けました。

三波さんから学んでいるのは精神面だけではありません。三波さんの長女・美夕紀さんが11年に「三波流」を創設すると、舞踊振り付けや長編歌謡浪曲などの指導を熱心に受けています。まさに「心技体」です。

三波さんの本名は北詰文司。子どものころ、田んぼで歌っていると「文ちゃんが田んぼで歌ってくれると仕事がはかどる」と近所の人に喜んでもらえたことが歌う原点になったといいます。

三山さんも祖母の大好きだった三橋美智也さんや春日八郎さんの曲を覚えて歌うと、周りの人がすごく喜んで笑顔になったそうです。「3歳くらいでした。あれが僕の歌う原点であり、初心です」と振り返ります。自身の歌唱で人を笑顔にする。「三波さんと根本的なところがまったく一緒なんです」。

三山さんは多芸多才です。ステージでは歌うだけでなく、ギターを弾き、ドラムもたたきます。趣味の落語は「三山家とさ春」という高座名を持ち、1部が落語で2部が歌謡ショーという特別公演をシリーズ化させました。「今の時代はエンターテインメントがあふれ返っています。そんな中でお客さまに喜んでもらうには、さまざまなことができないといけない。『平成・令和の演歌歌手』の歌い手として生き残るには、三山ひろしというコンテンツを充実させて、お客さまに楽しんでいただく方向にシフトしないといけない」と“芸事の総合商社”を見据えています。

歌以外でも、けん玉は芸能界最上段位の4段、ドローンはオペレーター3級、カブトムシ飼育は100匹超で、裁縫は生地から服を作れます。いずれも“一級品”です。

デビュー15周年を迎えている三山が今後、どれほど「三山ひろしというコンテンツ」を充実させていくのか、楽しみです。【松本久】