俳優で演出家の鼓太郎(53)が演出する舞台「三代目湯之介3~新春時間旅行編~」(東京・渋谷伝承ホール)が来年1月10~14日に上演される。
演出を手がける鼓太郎は「老舗旅館を舞台に、そこで起こる事件に3代目の若旦那が奮闘するハートフルコメディーです。主役の若旦那、湯之介役は橋本禎之と古田伊吹のダブルキャストです。役者として2時間ドラマとかに出させてもらっていますが、演出をすることで、また違った刺激をもらっています」と話している。
基本的にダブルキャスト。仁藤あいのと朝日玲菜、神太郎と神道明、原真善美と北田藍那、大門与作と太田直人、大鶴義丹とやたろうというキャスティングだ。
今年5月まで3年間に及ぶコロナ禍で苦汁をなめた。「コロナ時は、本当にダメでした。全然ダメとは言わないですけど、やっぱり当日になるまで舞台が出来るかどうか分からないんです。稽古する度に、ちょっと具合が悪いとか、熱があるとかで。劇場に対してうそをつくわけにはいかないから、もしもコロナが出ちゃったら止めなくちゃいけない。中止にするのも大役なんですけど、濃厚接触者のルールも、30分以上そばにいるとかいろいろあったじゃないですか」と振り返った。
今年5月にコロナが五類に移行して、わずかながら光が差した。「でも、今でもインフルエンザもそうですけど、やっぱりウイルス過敏というか、みなさんすごく気にしている。今だって、コロナが発生したら舞台は中止しなくちゃいけなくなってきますから。役者というのは、本当に自己管理です。コロナの時は、本当に演劇業界は終わった感じでしたね。芝居が終わっても、お酒を飲むことが許されず、劇場の入り口でお客さんの体温を測っても、やっぱり感染する人は感染してましたからね」。
ダブルキャストはコロナ、インフルエンザ対策もある。「ダブルキャストにしてやっていかないと、ちょっと怖いっていう。基本的にカバーできるようにダブルキャストの体制でやってるところもある。でも、言ってみれば役者のチャンスだった時期でもありましたね。コロナ禍で降板した役者の代わりに、主役に抜てきされるというようなこともありましたから。でもまあ、よくよく考えてみれば、そのコロナになる前もですね、稽古してる時にけがしちゃうとかで、代役っていうものはつき物なんですよ」。
今回の公演は2018年(平30)年8月、22年(令4)8月に続いて3回目。「大分変わってますよね。登場人物の2割くらい、家族とか旅館のスタッフはあんまり変わってないですけど、それ以外はガラッと変わってますから」。
俳優大鶴義丹(55)がキャストに加わった。「奥茶川虎之介っていう小説家の役です。僕はね、義丹さんとは共演はしてないと思ったんだけど、2時間ドラマで共演してたことがあったんですよね。僕の2歳年上で、同年代の共通の知り合いが結構多くてね」
88年(昭63)に秋元康氏(65)がプロデュースしたパフォーマンスユニット「幕末塾」のメンバーとしてデビュー。メンバーに彦摩呂(57)がいる。「幕末塾が舞台公演をやっていたんでね。正式に解散はしてないけど、メンバーはドラマに出たり、バラエティーに出る人もいた。その中で、僕は23歳ぐらいの時に劇団を立ち上げたんですね。テレビドラマの仕事も忙しくて、なかなか舞台の仕事をできなかったけど、やっぱり“生物”っていうのが好きだから」
自ら劇団を立ち上げたのは、出演するだけでなく、演出もやってみたかったからだ。「歳をとって来ると、舞台はなかなかお金にならないって分かって来るじゃないですか。でも、自分は何がしたいのかって考えると、皆さんいろいろとジャンルがあると思う。俳優はもうピエロみたいなものなんで、前とは違う役をやる、明後日はこんな役をやる。それで、皆さんが舞台を見に行って、笑うだけじゃなくて、自分たちに投影してこういう生き方もあるんだとか。こんな楽しいことを見たから明日頑張ろうっていう。単純でもいいんですけど“生物”で自分が輝けるっていうか、人のためになるって言うのはちょっと大げさですけど、そういう場が好きで喜んでくれる人の反応を見られるわけですよね」
役者であり、演出家。「役者の気持ちは分かるから、とりあえずいろんな演出のプランがあるんです。でも、僕は単純に一番前の席で一番高い金を払って、一番いい芝居を見たいという気持ちで演出してます。僕の演習のやり方は自由です。脚本もあるけど、やっぱりその役を考えて来るのが役者で、考えた役者がセリフと違うこと言ったら『なんで』って聞いてみる。ただ役者をやってるだけじゃなくて、いろんな引き出しを持ってなきゃいけないと思う。犯罪者の役だって、端から犯罪者ってことはなくて、どこで犯罪者のにおいを出すかということ。例えば、僕が犯罪者の役を演じるとしたら、それなりに人間ウオッチングが大切で、あとは先輩たちの芝居を見たりして。やっぱりモノマネっていうのは、役者にとっては人間ウオッチングと一緒だと思うんですよ。でも、いくらモノマネしても、例えばAさんが木村拓哉さんのことを好きだと言っても『君は木村拓哉に絶対になれないけど、木村拓哉も君にはなれないよ』と。だから、どんなに憧れた人がいても、その憧れの先輩にはなれない。だけど、その憧れの先輩も君にはなれない。それが個性だから。稽古では好きなようにやってもらって、それでどういう芝居になるかっていうのも、演出する方の楽しみでもあるわけです。交通整理ですよね。1つ1つ面白いピースを重ねていって大きな重なったパズルになる」
50代になって、髪の毛に白いものも出てきた。志は35年前と変わらない。【小谷野俊哉】
◆鼓太郎(こたろう)1970年(昭45)10月6日、東京都北区生まれ。太田プロダクション所属。16歳の時に史上最年少で和太鼓の日本チャンピオンになる。88年ストリートパフォーマンスユニット「幕末塾」のメンバーとなり、フジテレビ系「ナイスガイ・コンテスト」で準グランプリ受賞。89年(平成元)に秋元康プロデュース「Come on Let's Dance」でCDデビュー。94年の「免許がない!」で映画デビュー。ドラマは90年のTBS系「びんた」など多数にレギュラーやゲスト出演。最近ではNHK大河ドラマ「青天を衝け」、テレビ東京系「警視庁ゼロ係」、フジテレビ系「スカッとジャパン」がある。その傍ら、シアターバイキングを主宰し、舞台のプロデュース、演出を行っている。特技は和太鼓、武道。趣味はマリンスポーツ。176センチ、65キロ、血液型AB。



