シンガー・ソングライターの田内洵也(36)が、サザンオールスターズ桑田佳祐(69)がプロデュースした「深川のアッコちゃん(produced by 夏 螢介 a.k.a. KUWATA KEISUKE)」(タワーレコード限定発売)をリリースした。独自の音楽スタイルがあったからこそ「奇跡」の1曲が生まれた。
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事実は小説より奇なり。音楽を始めた10代の頃から憧れの桑田にプロデュースされた楽曲を、自分が歌っている。「これ以上にない幸せです、光栄です」。楽曲完成から時間がたった今でも、簡単には言葉にならない。
上京から約16年、歌う場所さえあれば、ギター片手に北海道から沖縄、大使館やヨットの上、全国の酒場をまわった。サブスクリプションサービスや動画配信が定着し、情報発信の場が多様化した現代だが「人と違うことをしよう」と、上京当時から“流し”のスタイルを今も貫く。そして約8年前、桑田が常連のバーに田内が演奏で訪問。偶然にも対面したことを機に交流がスタート。昨年、桑田の「1曲面倒みてやるよ」というひと言から2人のタッグが始動した。
またとない幸運に恵まれた。「僕はルーツミュージック、ブルースから音楽を始めました。昭和音楽だったり昔の音楽を人生で大切にしていて、その中核に桑田さんがいます。もしかしたら、それを桑田さんが感じてくださったのかなと。あとは単純に、桑田さんが流しを初めて目撃したと思うので…」と、縁の源泉を想像。出会った数日後には、ラジオで「洵也くん」と紹介された。「奇跡的」と笑うが、愚直に音楽と向き合う姿勢が、同じく音楽を愛する国民的歌手の心を動かしたのかもしれない。
自身が作詞作曲し、桑田の助言やアレンジを受けながら制作した楽曲「深川のアッコちゃん」では、切ない恋模様と人情劇を伸びやかな歌声に乗せて歌った。レコーディングには、憧れの桑田も同席。「桑田さんは僕が作詞作曲っていうこともあって、こんな僕に対してもすごく気を使ってくださった」と感謝する。
「『これにしよう』とかじゃなくて、『ここはどういう歌詞入れる?』と聞いてくれたり、僕が『これが良いと思います』と言うと『なるほど、それいいね』って僕の意見をすごく尊重してくれました」。天井を決めずに、リスペクトを込めて最良を模索する。音楽家としての背中に改めて感銘を受けた。
楽曲には「聴いた人に寄り添ってくれるような曲になったらうれしい」と願いを込めた。「人生で1人になる瞬間だったり、帰り道、失恋した後でもいい。僕もそうやって、サザンさんの曲を聴いていたので、心が動いた曲に流れているような曲になったらうれしいです」。
ギター1本で音楽を歌い継ぐ、誇りと使命感も口にした。「新しく音楽を作ることももちろん大切ですし、同時に昔の音楽を歌い継いでいくことも同じくらい大事だと思っています。伝統芸能をやられている方にすごく尊敬の念があって、やっていく人がいないと無くなってしまう物もある。僕もどんどんいろんな曲をカバーして歌っていきたいと思いますし、自分で新しい曲を作る時もその時代の物を受け継いで作っていきたいなと思っています」と意気込んだ。【望月千草】
◆田内洵也(たうち・じゅんや)1989年(平元)3月2日、長野県生まれ。愛知県とタイ・バンコクで育つ。幼少期からビートルズに憧れ、中学時代にギターを購入しバンコクのストリートで弾き語りを経験。東洋大学在学時から、ギター片手に流しの活動を始め、音楽活動を本格化。サザンオールスターズで好きな楽曲は「素敵なバーディー(NO NO BIRDY)」。10月に開催された「TOKYO FM 開局55周年×『桑田佳祐のやさしい夜遊び』放送30周年 九段下フォーク・フェスティバル,25」には前座で出演。



