愛媛県今治市は21日、同市内で、学校法人「加計学園」(岡山市)が4月に開学する岡山理科大獣医学部について、市民向け説明会を開催した。約500人の市民が集まったが、学園の加計孝太郎理事長(66)は出席しなかった。市民からは、建設予定地の無償譲渡や設備投資費約96億円の助成など、市の決定に対する不満が噴出した。

 説明会は予定通り2時間で打ち切られた。質疑応答の質問者はわずか3人。終了後には「何も説明されていないじゃないか!」と菅良二市長(74)に詰め寄る市民の姿も。予定されていた市長の囲み取材も「混乱をきたす」という理由で中止された。

 土地の無償譲渡や設備投資の決定経緯について質問した沢田康夫さん(76)は「質問に対して全く答えておらず、疑惑も一切晴らされていない。今治市は大赤字を抱えているのに、今回のこの巨額投資。公共料金の値段は上がっているのに」と怒りを隠せなかった。菅市長は「みなさんの生活に支障がないようにするのは大前提。議会の理解を得て決定した」と繰り返した。

 第2次安倍政権の国家戦略特区制度を活用し、計画された岡山理科大獣医学部。昨年11月に正式認可が下り、4月の開学が決まった。市が決定した学園への補助金や土地の無償譲渡については、市の第三者委員会が12日に「手続きに瑕疵(かし)はなく、妥当だ」との最終報告を出した。それでも市民からは、行政の不透明さや、巨額の補助金の使い道に関して、不満の声が止まらない。

 計画に反対する市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表(39)は「あまりにもひどい。説明する気が全くないんでしょうね」とあきれた表情で話した。黒川氏は、昨年の衆院選では安倍首相のお膝元、山口4区で出馬した。

 「結果は惨敗だったが、たくさんの仲間もできた。補助金詐欺疑惑など、お金の問題が全く立証されていない。一市民としても黙っていられない」。現在は、市に対して補助金支出の差し止めを求める住民訴訟を起こし、今後は市とともに補助金を支出する愛媛県に対しても、住民監査請求をする予定だ。

 一方、開学に賛成する声もあった。高校1年生の池本慎太郎さん(16)は「いろんな疑惑はあるが、大きな大学ができて、市の活性化にもつながる。進学の選択肢の1つにもなってくる」。市民の意見が分断されたまま、4月の開学を迎えることになりそうだ。【太田皐介】