テレビ朝日(本社・東京都港区)は19日未明、緊急会見し、財務省の福田淳一事務次官(58)にセクハラ被害を受けていたのは、同社の女性記者と発表した。記者が被害を申し出、録音内容を確認するなどして判断したという。一方、「週刊新潮」に女性記者へのセクハラを報じられていた福田氏は18日夕、電撃的に辞任を表明した。「現状では職責を果たせない」と述べる半面、セクハラは否定しているが、テレ朝の「告発」で、福田氏が虚偽の説明をしている可能性が強まってきた。
福田氏の辞任表明会見から約5時間後。テレビ朝日は緊急会見し、篠塚浩報道局長が、福田氏にセクハラを受けたと「週刊新潮」に報じられたのは同社女性記者だと明かした。記者が、社内調査にセクハラ被害を申し出、社による録音内容の確認や事情聴取で、記事と録音内容が一致。福田氏は18日の辞任会見でセクハラ行為を否定したが、「当社社員へのセクハラ行為は事実」と断言した。
同社は16日に調査を開始。女性記者は約1年半前から数回、取材目的で福田氏と1対1で会食。そのたびにセクハラ発言があり、自身の身を守るために録音を始めたという。新潮に報じられた会食は今月4日で、福田氏から連絡を受けて会食。その際もセクハラ発言が多数あり、途中から録音を始めたという。
新潮は、福田氏がこの席で「おっぱい触っていい?」「今日ね、今日ね、抱きしめていい?」などの発言をしたと、報じている。
記者は後日、上司にセクハラの事実を報じるべきと訴えたが、上司は本人特定などの不安を理由に、難色を示したという。記者は、財務次官のセクハラ行為が黙認されることへの懸念から、自ら新潮サイドに連絡して取材を受け、録音の一部も提供したという。
篠塚氏は、セクハラ情報を受けた上司の初動が適切でなかったと反省の念を表明。「セクハラの意識が低いからでは」と問われ、「その批判は受け止めなければと思う」と述べた。一方で、取材活動で得た情報を第三者(新潮)に渡した記者の行為も不適切だとして、「遺憾」だと述べた。
女性記者は精神的ショックを受けているというが、福田氏の辞任に対し「事実を認めないまま辞意を表明したことを、残念に思う。財務省は事実を明らかにしてほしい」と述べているという。同社は今後、セクハラやその後の対応について、財務省に抗議する方針。篠塚氏は「これから検討ということだと思う」と述べ、訴訟にも含みを残した。
財務省はこれまで、セクハラに遭った女性記者に、名乗り出て調査に応じるよう呼び掛けていた。テレ朝の「告発」という事態を受け、福田氏の説明責任は避けられない。音源の声を「福田氏だと思う」としながら、セクハラを認めてこなかった麻生太郎財務相の責任も問われそうだ。