今夏の参院選に向けた前哨戦で注目された衆院大阪12区、沖縄3区の補選は21日投開票され、自民党は悪夢の2敗を喫した。12年12月の第2次安倍政権発足後、自民の補選敗北は16年の衆院京都3区補選(不戦敗)以外で初めて。参院選を重視する安倍政権や自民党には、強い衝撃が走った。「忖度(そんたく)」発言など政務三役の失言が相次ぎ、長期政権のゆるみが露呈したのも一因。「令和」の政権運営は、不透明感を増してきた。統一地方選後半戦も投開票された。

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衆院大阪12区では、日本維新の会の藤田文武氏(38)、沖縄3区では事実上の野党統一候補、屋良朝博氏(56)が、それぞれ初当選した。自民候補はいずれも「完敗」だった。大阪では、安倍晋三首相が選挙戦最終日の20日に応援に入り、吉本新喜劇にまで出演したが、陣営内では「(来るのが)遅すぎる」と不満もあった。維新と対立する大阪自民と異なり、官邸は関係が悪くない。微妙な立ち位置も選挙結果に影響した。

自民は、大阪府知事&市長ダブル選に続き、維新に3連敗。現職だった北川知克氏の死去に伴う「弔い選挙」で本来は有利なはずが、議席を失った。沖縄は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県民投票で「移設NO」の意思が示され、当初から苦戦が伝えられていた。

2補選は、参院選の前哨戦。今年は12年に1度、統一地方選と参院選が重なり、波乱必至の「亥(い)年選挙」で、自民党は「必勝態勢」を敷いた。12年前は、統一地方選や参院選敗北が第1次政権退陣につながった。「悪くても1勝1敗」(関係者)を目指したが、不戦敗を除けば第2次安倍政権で初の補選敗北。悪い流れになりつつある。

自民党幹部は「厳しい結果だ。政権運営に影響はある」と述べた。桜田義孝前五輪相の「復興より議員が大事」発言、塚田一郎元国交副大臣の「忖度(そんたく)」発言で、政権のゆるんだ姿も露呈。二階俊博幹事長は取材に「(発言の影響が)全くなかったとは言えない」と、暗に認めた。

補選2敗は、政権の戦略にも影響を及ぼしかねない。首相側近の萩生田光一・自民党幹事長代行が、景気次第で10月の消費税増税見送りや、その場合の衆院解散の可能性に言及。首相周辺の水面下での選挙戦略が浮き彫りになった矢先に、出はなをくじかれた。一方で野党の選挙態勢は整っておらず、衆参ダブル選、参院選後の「8月衆院選説」が、永田町ではくすぶる。

安倍1強が続いた平成が終わり、令和の始まりを前に、永田町は波乱含みだ。