関東に上陸した台風としては、史上最大級の台風15号の直撃を受けた首都圏は9日、JRと私鉄の運行再開が大幅に遅れ、駅ではホームの入場規制が午後になっても続くなど終日混乱した。

特に強風などによる被害が大きかった千葉県内では、JRや京成電鉄などの各駅で、出勤できない人たちが駅周辺に数時間にわたり列をつくる“出勤難民”状態となった。JR東日本によると、在来線の計画運休やダイヤの乱れは約277万7000人に影響。各地で被害も相次ぎ、強風にあおられた女性ら3人が死亡し、約50人が負傷した。

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首都圏は8日夜から9日にかけて暴風雨に見舞われ、JRと私鉄各線は始発からの計画運休を発表していたが復旧は大幅に遅れた。山手線は午前8時ごろの再開を予定も、品川-大崎間の倒木のため午前10時15分頃にずれ込んだ。そのため埼玉、千葉、栃木、群馬からの乗客が乗り換える上野駅と千葉、茨城方面からの乗り換え客が多い秋葉原駅では東京に向かう外回りのホームに乗客が殺到した。

複数の路線が乗り入れるJR浦和駅もホームが乗客でごった返し、正午が過ぎても入場規制が続いた。東海道新幹線が始発から一時運転を見合わせた東京駅では、改札口近くの床に座り込む人もいた。

被害が大きかった千葉でもダイヤが大幅に乱れた。JRは東千葉駅の屋根が暴風雨でめくれ上がり、一部が飛んで電車に電気を送る架線にかかり、除去作業のため停電にした影響で、総武線の幕張-千葉駅間の運転が終日見送られた。京成線も線路の複数箇所に倒木、飛散物があり、成田空港に向かう京成本線などで運行が見合わせとなった。

その影響をもろにうけたのが、両線が乗り入れる津田沼駅だ。JRでは改札口に乗客が並ぶ中、午後12時半に千葉方面に向かう総武線の運行再開が午後6時以降になるとの案内が流れた。京成線では午前9時25分に千葉に向かう千葉線の運行が再開しており、駅員は「千葉に向かう方は京成線をご利用下さい」と呼び掛けた。

ただ京成線も通常ダイヤでの運行が出来ず、ホームの入場規制を行っていた。乗客の列は午後2時半時点で改札から周辺の道路まで100メートル以上に及び、タクシーを待つ列も駅前のロータリーをほぼ1周。最高気温33度の中、1・1キロ離れた両駅間を歩く人の列まででき「予定をキャンセルした」「午後2時過ぎてもホームにすら行けない」などと嘆く会社員が相次いだ。また京成津田沼、上野両駅では、成田空港に向かう路線がストップして足止めを食った、海外の旅行客が座り込む姿も見られた。

鉄道各社は早い段階で計画運休を発表しながら、暴風雨による施設の損壊、停電などが各所で発生し運行再開を遅らせざるを得なかった。そのため、いち早く出勤したい乗客が各駅に殺到し、ホームにすら入場できず“ラッシュ”が午後まで続く皮肉な結果となった。