国民栄誉賞棋士・羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)に挑戦する、将棋の第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第2局が22日、大阪府高槻市「山水館」で行われた。

21日午前9時からの2日制で始まった対局は、先手の羽生が勝ち、対戦成績を1勝1敗とした。第3局は28・29日、金沢市「金沢東急ホテル」で行われる。

バージョンアップされた「羽生の頭脳」が、AIを超える藤井の思考回路を上回った。開幕局で意表を突いた一手損角換わりに続き、今局では相掛かりの最新型で勝負に出た。初日からこの日の午前中にかけ、積極的に踏み込んだ。藤井陣の8筋に金を打ち込む。飛車も成り込んで迫る。藤井の反撃も振り切り、貴重な白星をもぎ取った。

深い研究は得意とするところ。平成の幕開けとなった1989年(平元)暮れ、19歳3カ月と当時の史上最年少で竜王を獲得すると、それを前面に押し出してタイトルを獲得し続けた。その数は竜王7、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16の計99期。

当時は棋譜を取り寄せ、盤の上で駒を並べて研究するのが普通だった。羽生は、いち早くパソコンに棋譜を打ち込んで局面を検索する方式を取り入れた。格段に素早く局面の研究ができるようになっただけではない。「羽生の頭脳」という定跡書を著し、昭和の将棋を徹底的に洗い直した。自らの研究結果を著書にすることで将棋を飛躍的に発展させるとともに、プロアマ問わず将棋を指す人のバイブルにもなった。

将棋界のIT革命家は今回、AI全盛でそれを上回る棋力を誇る32歳年下の史上最年少5冠に挑んでいる。羽生が将棋を始めた小学校低学年の時から通い始め、18年12月に閉鎖した「八王子将棋クラブ」(東京都八王子市)の席主だった八木下征男さんはよくこう話していた。「羽生君は、子ども大会に出ていたころから危ない手順を選ぶのが好きだったんですよ。楽勝の将棋でも平気な顔をして指すから、こちらが冷や冷やしたものです」。鋭く踏み込む姿勢はいささかも衰えていない。

若いころから、「運命は勇者にほほ笑む」という言葉を羽生は好んでいた。常にトップを走り、新しいことを積極的に取り入れている。「大阪・高槻冬の陣」での勝ち名乗りは、タイトル獲得100期に向けての大きな勝利となった。

◆王将戦 1950年(昭25)に一般棋戦として創設。翌年からタイトル戦に。8大タイトル(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の序列7番目。1次予選、2次予選はトーナメント。2予の勝ち上がり3人と、シード棋士4人の計7人による総当たり戦を例年9月から年内に開催して挑戦者を決める。同星の場合は原則、順位上位の2人によるプレーオフ。2日制の7番勝負は例年1~3月に、全国を転戦する。96年開催の第45期には、羽生善治6冠が谷川浩司王将に4連勝。叡王を除いて、当時あった7大タイトル全制覇を達成した。

【第72期ALSOK杯王将戦7番勝負・第3局以降の日程】

◆第3局 1月28・29日 石川県金沢市「金沢東急ホテル」

◆第4局 2月9・10日 東京都立川市「SORANO HOTEL」

◆第5局 2月25・26日 島根県大田市「さんべ荘」

◆第6局 3月11・12日 佐賀県上峰町「大幸園」

◆第7局 3月25・26日 栃木県大田原市「ホテル花月」