大谷翔平選手のごみ拾いやサッカーW杯での日本人サポーターのごみ集め…。日本人のごみへの意識がスポーツの世界で評価される中、「ごみ拾いはスポーツだ」を合言葉にした日本発祥の競技がある。
名付けて「スポGOMI」。3人1組のチームで拾ったごみの量のポイントで順位を決める競技。11月には初のワールドカップ(W杯)が渋谷で開かれ、21カ国が参加。回収されたごみは約548キロに。熱戦の様子を取材した。【中山知子】
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晩秋の東京都心で20度近い気温を記録した先月22日、渋谷の街をTシャツに短パンやスエット、スニーカー姿の人が、ごみ袋とトングを手に歩いたり走り回る姿が見られた。日本の人もいれば海外の人も。予選を勝ち抜いた21カ国の代表が「スポGOMI」の第1回ワールドカップ(W杯)で、熱戦を繰り広げた。
「スポGOMI」は、事前に決められたエリアの中で、決められた時間内(前半、後半とも競技45分、分別20分)でさまざまなごみを集め、その量や種類に応じて与えられるポイントを競い合うチームスポーツ。2008年、一般社団法人「ソーシャルスポーツイニシアチブ」の馬見塚(まみづか)健一代表が考案した、日本で生まれたスポーツだ。
背景には、世界的に問題になっている海洋ごみの約8割が陸地で発生していることを踏まえ、陸地でのごみを極力減らすことの効果を目指した側面がある。高校生を対象にした「スポGOMI甲子園」もあり、若い世代にも「ごみ拾いはスポーツ」という意識は浸透しつつあるようだ。
第1回W杯は同法人が主催し、日本財団が企画や支援を担当。予選には21カ国の1764チーム(日本の大会に、のべ1221チーム、海外は543チーム)が参加し、各国で予選を勝った代表チームが渋谷に集結、スタートの声とともに街に飛び出していった。
各チームの動きを見ていると、歩道や道路の目につきやすい場所だけではなく、自動販売機の裏や側溝、枯れ葉の中に隠れているたばこの吸い殻などを細かく見つけながら、袋に入れいた。決められたエリアの中でどこで、どんなごみを探すのか、時間をどう振り分けるかなど戦略的な側面も重要になる。身体も頭も使う競技でもあった。
集められたごみを見てみると、ペットボトルや缶などのほか、ポイ捨てが問題になっているビニール傘が多かったほか、中には毛布やマットなども確認できた。回収されたごみはすべて可燃、不燃などに分別され、総量は実に548・37キロ。「こんなに多いのか」と驚きの声も出ていた。日本財団によると、今年3月から始まった各国の予選では、日本で合計約4500キロ、その他の20カ国で合計約3900キロのごみが回収されたという。
集計の結果、83・70キロを集めた英国チームが、2位の日本、3位のイタリアを引き離して初代王者となった。メンバーのサラ・ルイーズ・パリーさんは「うれしい。でもとても疲れた」と笑顔をのぞかせた。他のメンバーの兄弟がブラジル代表となったことをきっかけに、日本への興味もあって予選に出場したという。「英国にはあらゆるところにごみがある。日本は探さないといけないのが素晴らしい」とした上で「このスポーツを英国に持ち帰り、競技人口を増やしたい」とも話した。
また、前半トップながら2位(55・50キロ)だった日本代表「スマイル・ストーリー」(新潟)の高橋智恵さん(46)は「渋谷は大通りもきれいで、どうやってごみを見つけようと思ったが(最終的に)50キロ以上集まったと聞いてびっくりした」と話した。リーダー綱本麻利子さん(44)は、「住んでいる地域には近くに海があり、20年から海岸のビーチクリーンを行っている。未来の子どもたちのためにこれからもできることをしたい」と話した。
次回大会は25年に東京で行われる予定が発表され、優勝した英国チームにはシード権が与えられた。海野光介常務理事は「ごみを拾う身のこなしを見て、あらためてごみ拾いはスポーツだと感じた」とした上で「いつか、スポGOMIの必要ない社会、街や海からごみがなくなる社会を目指したい。難しいチャレンジだが、皆さんとともに同じ未来を見ていきたい」と話した。
■誰でも優勝が狙えるスポーツに
「スポGOMI」という競技を08年に立ち上げた生みの親である馬見塚健一氏は、第1回W杯について、取材に「うれしくて言葉にならない」と口にした。「立ち上げのころはあまり理解されなかったし、すごく苦労した」と振り返り、開会式の際には涙ぐむ場面もあった。
「ルールをつくるときに、男女差や体力差、年齢差もなく誰でも優勝が狙えるスポーツにしたかった。今回、スポGOMIをいろんな国の人が受け入れてくれた。すごいことだと思う。後は、どんどん仲間を増やすしかない。違う国にも広げていきたい」と、参加国拡大にも意欲を示した。また「海洋ごみの問題は1つの団体が一生懸命やっても解決する問題ではない。輪を広げていくという意味ではひとつの大きな1歩になった」とした上で「海洋ごみの問題が自分の生活とつながっていると感じてもらうには、ごみ拾いに参加してもらうのがいちばん。これからは若い世代にも広げていきたい」とも語った。
◆日本人とごみ拾い 「スポGOMI」は日本発祥の競技だが、日本人とごみを拾う行為をめぐってはほかにも知られた例がある。
エンゼルスをFAになった大谷翔平投手(29)は、試合中の出塁時などに視界に入るエリアに落ちているごみを拾ってユニホームのポケットに入れたり、グラウンド外に出したりする振る舞いが定番で、「クール」だとと称賛された。大谷は21年10月「ベンチの中だったりとか、危なかったりする。そういう小さい、つまらないケガというか、自分もそうですが、周りの人にはして欲しくないと思っている」と語り、けが対策の一環でもあると明かしている。
また、日本のサポーターがサッカーなどの国際大会を観戦後、勝敗にかかわらずスタジアムでごみを拾い集める姿も恒例に。昨年のW杯カタール大会でも、日本代表の試合後に青い袋を手にごみを集めるサポーターの姿が話題になったほか、今年のラグビーW杯フランス大会でも同様の姿が見られ、大会の公式SNSが写真とともに「Respect」と投稿した。

