今年の皐月賞は3戦以上した馬の中に全勝馬はいない。ホープフルSも牝馬レガレイラが制し、混戦ムードが漂う。先週の桜花賞をステレンボッシュでズバリの水島晴之「G1の鍵 その一瞬」はウォーターリヒト(牡3、河内)に注目した。最近は不振と言われる「トライアル組」だが、スプリングSの敗因を分析すると、大駆けの可能性が見えてきた。

スプリングSで9着だったウォーターリヒト
スプリングSで9着だったウォーターリヒト

ウォーターリヒトは前哨戦にスプリングSを選択した。もちろん賞金を加算しなければ、という状況でもあったが、皐月賞までは中3週の強行軍。最近のトレンドとは逆行する。だが、ここまで7戦と豊富なキャリアを誇り、初勝利も中2週→中2週と間隔を詰めて結果を出した。新馬で5着に敗れたのを見ても「たたき良化型」なのは明らか。このローテーションはむしろプラスに働く。

スプリングSは9着と惨敗したが、変則的な流れが影響した。逃げたアレグロブリランテの前半1000メートルは63秒1の超スロー。レースのラスト2ハロンが10秒9、10秒8では後ろから行った馬はお手上げだ。しかも直線伸びかけたところで、内の馬にぶつけられる不利もあった。

幸騎手も流れが遅いのは分かっていたが、シンザン記念3着、きさらぎ賞2着で追い込む形が定着してきたこともあり、この馬のスタイルを貫いた。末脚不発ではない。大外を回って自己最速の33秒5をマーク。勝ったシックスペンスは別格としても、2着とはわずか0秒3差。悲観する内容ではなかった。

さらにスローペースが思わぬ効果をもたらした。ウォーターリヒトの前半600メートル通過は推定39秒3。ハロン13秒ペースで、実質競馬をしたのはラスト2、3ハロンだけ。1週前追い切り後に幸騎手が「疲れもなく、具合は良さそう」とコメントしたように反動なくこられたのは良かった。

もし、疲労があれば坂路(4ハロン53秒4-12秒2)で強めの負荷はかけられない。前走がいいあんばいの前哨戦となり、調整は順調に進んでいる。シンザン記念は大外を強襲、きさらぎ賞は馬場の悪い内を伸びた。展開には左右されるが、はまれば突き抜ける脚はある。ぎりぎりで出走枠に滑り込んだ運を味方に人気薄での大駆けが怖い。

【ここが鍵】見極めが重要

最近は「トライアル競走」の意味合いが薄れてきた。昨年の覇者ソールオリエンスは1月の京成杯からぶっつけ挑戦。22年ジオグリフも2月の共同通信杯から直行ローテだった。馬場の高速化が進んだことで、1戦ごとの消耗が激しく、ダービーまで見据えると「無理使いを避けた方が賢明」という陣営が増えてきたためだろう。

弥生賞、若葉S、スプリングSから皐月賞を制した馬は、18年のエポカドーロ(スプリングS2着)までさかのぼらなければならない。ただ、2冠のうち皐月賞に比重を置く馬にとっては中3週、もしくは中5週で本番を迎えた方が力を発揮できるタイプもいる。どのステップが合っているのか。そのあたりの見極めが重要になる。

■メイショウタバル 優秀な時計

3連勝中のメイショウタバルは、毎日杯で6馬身差の圧勝を演じた。道悪の巧拙の差が出たようにも思われるが、逃げて上がり最速(34秒4)タイムはなかなか出ない。勝ち時計の1分46秒0は、同日の君子蘭賞(3歳1勝クラス)より2秒3も速く、かなり優秀といっていい。中山までの長距離輸送、中2週の強行軍など課題は多いが、これらをクリアすれば粘り込みがあっていい。

■ミスタージーティー 新たな一面

ミスタージーティーは若葉S(1着)で、新しい一面を見せた。これまでの後方待機ではなく、好位から最内を抜け出す大人びた競馬で快勝。2着馬をかわすのに少しもたついたが、自在な立ち回りができたのは収穫だ。現状は東京より小回りの中山向き。ホープフルSは直線で前が詰まり脚を余したが、進路があれば際どかった。初めての中3週が鍵になるが、状態次第で上位を狙える。