<皐月賞>◇14日=中山◇G1◇芝2000メートル◇3歳牡牝◇出走17頭

皐月賞を制したジャスティンミラノの戸崎騎手はガッツポーズする(撮影・柴田隆二)
皐月賞を制したジャスティンミラノの戸崎騎手はガッツポーズする(撮影・柴田隆二)

競馬では時に、理屈や数字で説明できないことが起こります。4コーナーで戸崎騎手がジャスティンミラノの手綱を懸命に押す姿を見て、これは無理だと思いました。まして、すぐ前から川田騎手のジャンタルマンタルがすごい手応えで抜け出していました。押し切ったな、と思った坂の上からドラマが始まります。

あれほど手応えのなかったミラノがステッキを受けてもう1度、伸びてきました。ジャンタルをとらえ、すぐ外から一緒に伸びたコスモキュランダも首差抑えて勝利しました。戸崎騎手がインタビューで話した「康太の後押し」。そうとしか説明ができないような、すばらしい末脚でした。

皐月賞を制したジャスティンミラノ(中央)(撮影・丹羽敏通)
皐月賞を制したジャスティンミラノ(中央)(撮影・丹羽敏通)

10日に亡くなった藤岡康太騎手は、ミラノだけでなく、友道厩舎の調教を普段から手伝っていました。競馬に乗る馬も乗らない馬もです。友道師が康太騎手の騎乗技術、そして人柄を信頼していた証しでしょう。それだけに友道師もつらかったと思います。この勝利は友道厩舎としての何よりの供養です。3戦無敗、レコードで皐月賞を制したジャスティンミラノは、あの藤岡康太が調教をつけていた馬だ。ファンの記憶に刻まれ、後世まで語り継がれることでしょう。

3日、ジャスティンミラノの皐月賞1週前追い切りで騎乗する藤岡康太騎手
3日、ジャスティンミラノの皐月賞1週前追い切りで騎乗する藤岡康太騎手

最後は3着となったジャンタルも強い競馬でした。前後半1000メートルずつのラップは57秒5-59秒6。かなり速い流れを好位3番手で運び、先に抜け出して、押し切ったかというシーンを作りました。わずかに脚があがったのがペースなのか距離なのか、その見極めは難しいところですが、能力は間違いありません。

1番人気の牝馬レガレイラは6着でした。後方から上がり最速タイの脚で追い上げましたが、届きませんでした。前崩れでもおかしくないペースでしたが、好位から伸び続けた1着ミラノと3着ジャンタルが強すぎました。それでも牡馬を相手に6着なら立派。今後の進路選択にも注目しています。(JRA元調教師)

ジャスティンミラノで皐月賞を制した戸崎騎手を抱きしめる友道師(撮影・丹羽敏通)
ジャスティンミラノで皐月賞を制した戸崎騎手を抱きしめる友道師(撮影・丹羽敏通)