【リヤド(サウジアラビア)25日=藤本真育】世界のYAHAGIがまたも快挙達成だ! 吉田豊騎手(47)を背にしたパンサラッサ(牡6、矢作)が、世界最高の1着賞金13億円をつかんだ。好スタートから単騎逃げに持ち込み、昨年のドバイワールドC覇者カントリーグラマー(2着)の追い上げを退けた。日本馬初のサウジC制覇。矢作芳人調教師(61)は海外G1・8勝目となった。また、3着カフェファラオ、4着ジオグリフ、5着クラウンプライドと“チームJAPAN”が上位を独占した。

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世界のホースマンを魅了する逃走劇だった。日本競馬が誇る“個性派”パンサラッサが、類いまれなスピードで1着賞金13億円をつかみとった。吉田豊騎手は渾身(こんしん)のガッツポーズ。まだ走り足りないと言わんばかりの愛馬をなだめながら、サウジの空に右手を突き上げた。

「相手関係ではなく、パンサラッサの競馬をして、結果がついてくればと思っていました。この勝利は忘れられません。騎手をやっていてよかったです」

来るなら来い。いつも通りの強気なレースで勝利をたぐり寄せた。鍵は発馬。「この馬の競馬をするだけ」。矢作師の頭には逃げしかなかったが、スタートが速くないため最内1番枠は課題だった。しかし、鞍上には確かな手応えがあった。「いつもうるさい馬だけど、今日は落ち着いていた。これならと思った」。好スタートを決めてハナへ。こうなればパンサラッサのもの。4コーナーで後続を突き放し、粘りに粘って逃げ切りV。鞍上が全能力を完璧に引き出した。

矢作師と吉田豊騎手には深い絆がある。師が開業前の技術調教師だった04年。リージェントブラフでドバイワールドCに騎乗予定だった同騎手が師をドバイへ連れて行った。「飛行機から何から全部手配してくれた」。海外遠征を熱望していた師はその感謝を忘れなかった。歳月が流れ、昨年制したドバイターフ。鞍上に指名した際の電話に驚く吉田豊騎手に「借りは返したぞ」と言った。ドバイで結ばれていた“黄金コンビ”が、今度はサウジで大きなタイトルをつかんだ。

海外G1・2勝をひっさげて、戦いの舞台はドバイに移る。次走は連覇のかかるドバイターフ(G1、芝1800メートル、3月25日=メイダン)を予定していたが「オーナーと相談ですが、ドバイワールドC(G1、ダート2000メートル、同)の可能性もあります」と師。芝&ダートの“二刀流”で世界を制したパンサラッサ。世界最強の逃げ馬として、どこまでも逃げ続ける。

■吉田隼「すごい」

サウジCをパンサラッサで制覇した吉田豊騎手の快挙を、8歳下の弟隼人騎手も喜んだ。レースをリアルタイムで観戦。「すごいことをやりましたね。日本人の騎手、調教師で世界を取って僕もチャンスがあったらなと思いますし、夢や希望、パワーになるものをいただきました。(兄には)おめでとうございますと言いたいです。すごいと思います」と大きな刺激を受けていた。