ゴールドシップなどの名馬を担当した今浪隆利元厩務員(64)が、夢いっぱいの競馬人生を振り返る、手記連載「今なお夢の中」(全5回)の最終回。
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18歳の時に厩務員の試験に合格して、まず内藤繁春先生の厩舎でお世話になりました。この世界に入れてもらい、本当に感謝しています。当時はまだ、同じ厩舎でも勝負の世界。先輩たちの仕事を見て覚えましたが、最初の頃は年に1、2回しか競馬へ出られないこともありました。昔はあまり放牧に出さず、軽いけがなら厩舎に置いたまま治したりして、今のように効率良く出走できなかったからです。レースに出なければお金も稼げません。嫁さんにも苦労をかけました。
そうして6年ぐらい働いてから、内藤先生の勧めで中尾正厩舎へ入りました。先生は厳しい方で、よく怒られましたが、言われたのは正しいことばかり。よく覚えているのが「俺が責任をとるから、隠しごとはするな」という言葉です。馬に異常があると、時には隠したい気持ちが出てしまうものですが、同じ厩務員の出身でもあったので、すぐにばれました。脚元の見方や馬の引き方なども教わりました。責任感の強さや仕事への熱意など、すごく勉強になりました。
中尾正厩舎が定年で解散して入ったのが須貝厩舎です。ゴールドシップやソダシをはじめ、これだけの馬を担当させてもらい、たくさんの夢を与えてもらいました。先生は自分のやり方を無理に押しつけることなく、ある程度は自由にやらせてもらえました。調教師だからと壁をつくらず、普段は「ナミちゃん」と呼んで、いい意味で友達のようなつき合いをしてくださいました。笑いの絶えない厩舎でしたし、そういう雰囲気の良さは馬にも伝わっていると思います。
こうしてたくさんの馬や人と出会い、定年までやってこられました。いろんな夢を見られましたが、これからはファンとしての夢もいっぱいあります。担当してきた馬たちの中には、ソダシのようにまだ現役の馬もいますしゴールドシップのように産駒がいる馬もいます。それを応援するのが今の楽しみです。夢は死ぬまで続きます。それは本当にありがたいことです。(おわり)
◆今浪隆利(いまなみ・たかとし)1958年(昭33)9月20日、福岡県北九州市生まれ。15歳で高校を中退して名古屋競馬の騎手候補生に。牧場勤務を経て栗東で厩務員。内藤繁春厩舎、中尾正厩舎、09年から須貝厩舎。ゴールドシップ、レッドリヴェール、ソダシでJRA・G1計10勝。

