レジェンドであり、親戚でもある武豊騎手の言葉を胸に-。京都新聞杯覇者ジューンテイクを送り出す武英智調教師(43)は、開業7年目で今回が管理馬のダービー初出走となる。騎手時代は、1度もダービーに騎乗することができなかった。99年の騎手デビューから25年、ようやくたどり着いた夢舞台だ。穏やかな表情で、心境を語った。
「この世界にいる人にとって、ダービーはやはり特別。出ることができて良かったです。ただ、僕は一番浮き足だってはいけないポジション。平常心でいつも通りの仕事を、と思っています。周りが盛り上がっているのを見て、ワクワクはしていますよ」
約20年前のダービー直前-。武豊騎手の“ある言葉”が心に刻まれている。
「豊さんが『ダービーの日は、騎乗馬がなくても、必ず東京にいるようにしている』と言っていたんです。万が一、乗り替わりが発生したら、すぐ乗れるようにしていたんだと思います。あの武豊騎手でも常にダービーを一番に考えている。その言葉を聞いてから、余計に重みを感じるようになりました」
ジューンテイクが京都新聞杯を勝利し、ダービー出走が決まった時。ダービーを6勝しても「もっと勝ちたい」と言っていた名手の言葉が頭に浮かんでいた。
武英師のダービー初出走には、不思議な縁もある。師の“ダービー初参戦”は、キズナが勝った13年5月26日。当時、木原厩舎の調教助手としてメイケイペガスターの調教を担当していた。仕上がりの良さに自信を持って送り出したが「パドックでキズナを見た時に、すごい馬だなと思いました。直線で外から来た時に、やっぱりすごいなと。何歳になっても武豊ってかっこいいなと思いました」とダービー馬の偉大さを実感したという。その衝撃からちょうど11年がたった24年5月26日。そのキズナの産駒ジューンテイクを管理する立場として、ダービーに臨むこととなった。
「本当に運命みたいなものを感じますよね。しかも、初めてのダービーに前哨戦を勝った馬で挑める。感謝しかないです。チャンスはあると思っていますし、とにかく順調にきていることが何より。このまま無事に。これで勝てたら、かっこいいですよね」
さまざまな思いを胸に、目指すは3歳馬7906頭の頂点。決戦の時が、いよいよ迫ってきた。【藤本真育】

