律義な人だ。藤田菜七子騎手の結婚を聞き、コロナ禍で取材規制のあった21年をまず思い出す。取材担当として毎週、電話を入れていた。約束の時間はその週末の出走馬が確定する木曜の午後4時ちょうど。負傷離脱期間もあったが1年間、彼女は必ずといっていいほど、3コール以内に応じてくれた。

競馬を離れれば、女性らしさにあふれた。17年1月のマカオ遠征では偶然、帰国便で並びの席になった。ちょこんと体育座りをして、女性ファッション誌を熟読。翌年末、初めて焦げ茶色に髪を染め、淡いオレンジのネイルを施したが「厩舎の人が誰も気付いてくれなかった」とほおを膨らませたこともある。馬上で戦う一方で、よく笑う。競馬への真っすぐな姿勢があるから、そのギャップが映えた。

競馬学校在籍時から憧れはニュージーランドの女性騎手、リサ・オールプレス。結婚や出産を経験した大先輩だ。以前、彼女はこんなことを言っていた。「私にとってリサがそうだったんですけど、私が頑張ることで目標になれれば」。16年ぶりに女性騎手としてデビューして9年目。コメントには常に後輩を気遣う思いがにじんだ。節々から感じられる優しさに、お相手もきっと引かれたのだと思わずにいられない。【松田直樹】