記憶にも記録にも残る1勝だ。

4日に新規開業した手塚貴徳調教師(33)が7日、中山12Rの4歳以上1勝クラス(芝1600メートル)でレッドレナート(牡5)を送り出し、管理馬初出走初勝利を挙げた。栗東・吉岡辰弥師が2020年3月15日中京6Rを制して以来で、1954年のJRA設立以降で28人目。JRA・G1を10勝の父貴久師の前で決めた。

   ◇   ◇   ◇

ゴールの瞬間、涙腺が緩んだ。声を発せず、自然と感情が込み上げた。「普段泣かないんですけど、涙が出ました。うれし涙が出たのは…記憶にないです」。小学時代から幼なじみの横山和生騎手に手綱を託した。好スタートから主張して先頭へ。そのまま直線を向き、後続の追い上げをしのいだ。「勝ったと思ったのはゴールちょっと前くらい。直線向いて勝つかなと思いましたけど、外から来るかもしれないので分からなくて」。検量室前に帰ってきた横山和騎手から「貴徳! ほんっとにうれしい! 1回しかないからね」と歓喜の言葉をかけられた。

レッドレナートは元々父の管理馬。開業初日に父の厩舎で追い切ってから自身の厩舎へ移ってきた。手塚徳師は「父親からいい馬を引き継がせてもらいました。転厩すると分かっていてもしっかりと手をかけてもらいましたし、昔から知っているスタッフも多くて、僕のためにもうまく仕上げてくれたので、それをあとは無事に送り出すことだけが私の厩舎の仕事でした。うちに来てくれたスタッフも腕利きの人が多くて安心して任せられました。初出走で緊張しましたけど、その中でも安心感がありました。和生もよく知っている仲ですし、前日も乗ってもらって状態もすごくよさそうでしたし、準備は大丈夫だったと思います」とうなずいた。

1992年生まれのJRA現役最年少トレーナー。「本当にこれまで、調教師になるまでいろいろな人に助けられてここまで来られたので、全ての人に感謝でいっぱいです。自分1人では何もできないので、周りの人あってこそ。昔から父親という存在がいてそのあたりは分かっていました。よりいっそう関わっている人のためにも一頭一頭しっかりと管理して、よりよい成績を残せるように頑張っていきたいと思います」。最高の船出を決め、大海原へ飛び込んだ。【桑原幹久】

◆父の貴久師 感激しましたね。究極仕上げでしたから。すごくうれしいです。