6回表阪神2死一、二塁、左飛に倒れた大山悠輔(撮影・森本幸一)
6回表阪神2死一、二塁、左飛に倒れた大山悠輔(撮影・森本幸一)

大山はほとんど自分のスイングができず、4打数無安打に終わった。1本打てば、巨人岡本を抜いて本塁打王争いでトップに立てた試合。初球から積極的に振るのはいいことだが、打ちたい気持ちが強過ぎ、力が入り過ぎていた。力が入り過ぎるとバットのヘッドも走らない。これだけ本塁打を打つと、バッテリーも警戒感を強めた配球になってくる。打ちたい一辺倒では余計にかわされてしまう。

本塁打王を狙うために必要なことは、相手の心理や状況に応じた駆け引きだ。単に来た球を打つとか、打ちたい気持ちだけでは数を打てない。ボール先行で苦しい場面、1点もやれない場面、ソロ1発なら食らってもいい場面…。それぞれどんな球を選択してくるのか。大山にはぜひ、この駆け引きを重視して、楽しむようになってほしい。駆け引きを楽しむことで打ちたい一辺倒が薄れ、自然と力が抜ける。力が抜けるとヘッドも走る。

いいお手本が目の前にいる。前を打つ4番のサンズだ。勝負強いサンズを打ち取るために、バッテリーは配球にかなり苦労している。イヤなところを探して、多くの球数を使って、ものすごく慎重に投げている。サンズも試合展開や相手の心理状態を読みながら、駆け引きで対抗し、本塁打やここ一番でのヒットにつなげている。この姿はとても参考になるはずだ。

相手の心理状態が分かってくると、配球も読めてくる。狙った球と投げてくる球の合致する確率が高まるほど、ホームランにできる確率も高まる。シーズン中にバッティングそのものを変えることは難しい。でも打席に立つ時のメンタルの部分は変えられる。大山が本塁打王を取るチャンスは大いにある。プレッシャーも含めて、残り試合はとてもいい経験になるはずだ。(日刊スポーツ評論家)

中日対阪神 6回表阪神2死一、二塁、大山は左飛に倒れ悔しがる(撮影・上山淳一)
中日対阪神 6回表阪神2死一、二塁、大山は左飛に倒れ悔しがる(撮影・上山淳一)