権藤さんも虎の強さを認めた! 98年横浜の日本一監督で日刊スポーツ評論家の権藤博氏(82)が、交流戦6連勝締めでセ界首位を独走する阪神の戦いを高評価。

2位との7ゲーム差は逆転が難しい強力なアドバンテージとし、阪神の優勝確率が極めて高いと分析した。辛口で知られる権藤氏だが、現状では不安や課題も見あたらないとして、逃げ切り濃厚を強調した。【聞き手=松井清員】

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楽天対阪神 楽天に3連勝し笑顔でベンチへ引き揚げる阪神ナイン(2021年6月13日撮影)
楽天対阪神 楽天に3連勝し笑顔でベンチへ引き揚げる阪神ナイン(2021年6月13日撮影)

阪神は2位の巨人とヤクルトに7ゲームでしょ。ものスゴい離し方。私も横浜の監督で優勝した98年に一時、2位を6ゲーム離したけど、6連敗しても2位が6連勝しない限り大丈夫という安心感があった。3ゲームだと3連敗、3連勝でひっくり返される危機感がある。でも7ゲームも離すと、相手も首位が相当強いと感じる。今年は阪神が勝つのが当たり前になって、常勝巨人をこれだけ引き離すと、ファンもとても気持ちいいんじゃないですか。

残り試合は阪神83で巨人79。まだシーズンの3分の1強が終わったぐらいだけど、7ゲームは大きい。しかも阪神は先発、中継ぎは良いわ、打線も強力で言うことない。田中マー君を撃ったり、先制されても簡単にひっくり返す。7、8回で危なくなっても、スアレスがどっしりしている。特に交流戦最後の6連勝は、際立つ強さを感じました。

今年の巨人は仕方ないと思うんですよ。坂本や菅野、梶谷をはじめ、次から次に主力の故障者が出た。丸も不調でファームに行ったし、離脱者が出ると他の主力はカバーしようといつも以上に力が入って、本来の力が出せない。まず坂本や菅野が戻って、今週末の阪神戦で丸や梶谷も戻ってきてやっと、さあこれからだとなる。では、どう立て直すか。特に投手陣、抑えをどう立て直すか。でもゲーム差を考えたら、7なんてとんでもない数字ですよ。

阪神は巨人と一騎打ちだとか、考える必要は全くない。今まで通りの戦い方をして、自分のペースを貫くことです。相手がよほどのペースで勝たない限り、7ゲームは縮まらない。巨人が来た、次はヤクルトが来た、その次は中日が来たとかでは、阪神との差は縮まらない。阪神はいかに自分たちの戦いをするかだけ。

阪神の課題や不安要素? 今そんなこと言ったら怒られますよ。よほど自分たちでコケて強力な相手が出てこない限り、83試合残っているとはいえ7ゲームは大きい。ずーっと1カ月負け続けて、ずーっと1カ月勝ち続けるチームが出てこないとひっくりかえらない。ここまで良い戦いをしてきたチームは、そんなに落ちっこない。打線は水物だけど、投手陣がしっかりしているから、ボロボロになる可能性が少ない。あとはもう、ヨソ次第ですよ。ヨソも阪神のペース次第ですよ。いくら自分のとこが頑張っても、阪神がコケないと追いつかないですから。

確かに7月中旬から五輪ブレークとなる約1カ月は、流れを左右する可能性があるかも知れません。下位チームは流れが変わってラッキーになるのか、上位チームは逆に不運になるのか…。でも阪神は1カ月試合がない間に6ゲームも、7ゲームも離して調整できるのは、気持ちいいんじゃない? その1カ月でますます強くなる気がしますよ。

阪神-巨人は残り16試合ある。巨人が2勝1敗ペースでも、まだ阪神の方が上なんです。巨人はもう、阪神戦で毎回3連勝を狙うしかないでしょう。そう簡単にできることではないけど、それができたらペナントレースが面白くなる可能性がある。今は数字的に、阪神の姿は遠くかなたで、後ろ影も見えない。でも巨人も伝統のある強いチームでただ者じゃない。実際に08年は阪神が落ちた後半戦で勝ちまくって、13ゲームを逆転したし、主力が全員そろえば必ず追い上げてくるでしょう。もし3ゲーム差ぐらいになれば、“本当の戦い”が起きる。でも、今年の阪神は本当に強いですよ。阪神は巨人に3連敗さえしなければいい。リーグ戦が再開する、18日からのTG3連戦に注目してみましょう。

楽天対阪神 6回表阪神2死、右越えソロ本塁打を放つ佐藤輝。投手田中将(2021年6月12日撮影)
楽天対阪神 6回表阪神2死、右越えソロ本塁打を放つ佐藤輝。投手田中将(2021年6月12日撮影)

○…権藤氏は阪神の首位快走に佐藤輝の活躍が不可欠と評価した。「打線強化に佐藤の刺激は大きい。2月のキャンプでスイングを見た時から、20~30年の逸材と言ってきたけど、まさかこれだけの本塁打を打つとはね」。初の1試合4三振を喫した8日の日本ハム戦を見た際には、日刊スポーツでやや辛口評論。「でも翌日、2安打2打点でしょ? 攻められて三振もするけど、全くスイングが変わらない。投手は振られるのが一番いやで本塁打が怖い。佐藤の“マイペース”はスゴい」とうなっていた。