とにかく勝ってほしかった。実力的には文句なしのNO1だと思っていたが、実力差よりも苦戦するとは思っていた。ほとんどの選手が対戦したことが少ない相手であり、日本には「勝って当たり前」という雰囲気もある。今回の五輪は本拠地開催であり、負ける要素は少ないが、それだけに「負けられない」というプレッシャーは大きかったと思う。それをはね除け、金メダルを獲得した侍ジャパンに敬意を表したい。

日本の実力は確実に上がっている。まず、決勝の本塁打を打った村上は、8番を打っている。これは投手にとって嫌なもの。いい投手であればあるほど、7番以下の打者に対して手を抜いて投げたくなるが、村上のスイングを見て「楽な打者」と思う投手はいないだろう。0-0で迎えた3回1死、カウント2-2から外角のチェンジアップを左中間に本塁打したが、少し高かったとはいえ、外角のそれほど甘いコースではなかった。それを8番にいる打者が逆方向に本塁打するのだから、打たれた投手もたまったものではない。

自慢の投手力も健在。プロ入り2年目の森下が先発して5回を無失点。ケガ明けの千賀が1イニングを無失点に抑えたが、2人のルーキーの伊藤大と栗林がマウンドに上がった。他国のいい選手はメジャーに移籍し、全体的な選手層は薄くなったが、侍ジャパンのメンバーにはレベルが落ちたような感じはみじんも感じなかった。

正式決定はしていないが、23年にはWBCが開催される可能性がある。近年のWBCはメジャーにも浸透していて、バリバリのメジャーリーガーが参戦するようになった。勝つのは難しくなったが、日本野球の実力を測る絶好の舞台だと思う。今から楽しみになっている。(日刊スポーツ評論家)

日本対米国 5回表米国2死一、二塁、アルバレスを遊ゴロに仕留め、ガッツポーズを見せる森下(撮影・河野匠)
日本対米国 5回表米国2死一、二塁、アルバレスを遊ゴロに仕留め、ガッツポーズを見せる森下(撮影・河野匠)
野球の決勝トーナメント表
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