阪神ベンチ前で梅野隆太郎捕手(27)、原口文仁捕手(26)ら捕手陣が行っている練習が興味深い。ときにはミットを使わずに、左手の親指と人さし指の2本で、山田勝彦バッテリーコーチ(48)の投げるトスを受けている。

 これが意外に難しい。ガッチリとつかめるときもあれば、思わずポロリとこぼすときもある。手のひらを使わず、さらには3本指でもなく、絶対に2本の指でつかむ。

 「いいキャッチングをするためには、指先に神経をとぎすませてね。肘の使い方も考えて捕ってほしいし、ボールの威力をうまく吸収するイメージ。ストライク、ボールの細かな判定で投手を助けられるようにするには、キャッチングをよくしないとね」

 MLBでは最近、捕手の守備力も評価している。いわゆる“フレーミング評価”だ。フレーミングとは、際どいコースにきた投球を捕球技術でストライクと判定させるスキルのこと。そのためには1センチ、さらに1ミリ単位でミットの位置を気にする必要が出てくる。

 「メジャーの練習法を見てね。動画で見て、そこから取り入れたんだよ。いいものは採用していかないと。選手はみんな、うまくなりたいんだからさ」。

 日々の練習に加えて、新たな練習法を取り入れていくのが山田コーチのスタイルだ。

 さらには、珍練習? もお披露目した。山田コーチの転がすゴロを、捕手陣は止めるのではなくスルーする練習だ。座って構えた状態から、体の正面に転がって来るボールを上手にかわす。捕球姿勢を取って右に、左に動く。

 「反射神経も鍛えていかないとね。ボールを通過させるけど、体はボールの方に向けて。体を内側に向けて、ワンバウンドや暴投を止めるときに変な方向にはじかないようにね。上手になるにはきっちりと練習するだけですよ」

 故きを温めて新しきを知る-。新たに取り入れている練習法で上達していく選手たち。山田コーチのトライ精神が、チームにプラス効果を生み出している。【阪神担当 真柴健】