新型コロナウイルス感染拡大の影響による無観客試合でシーズンが開幕した。2週間が過ぎ、中日も本拠地ナゴヤドームでの2カードを消化。球場の106ビジョンを使った映像や、応援団の音声再現など盛り上げているが、人けのないスタジアムには違和感が残る。

取材もズームやLINE(ライン)を使った取材が中心となり、これまでと違う取材に戸惑う場面も多い。新聞だけでなく放送する側も違和感を感じながら中継をしている。毎年地元のラジオ局は中日戦を全試合中継する。東海ラジオの森貴俊アナウンサー(44)も無観客でのシーズンに戸惑っている1人だ。

「プレーをしている選手と同じように、球場にいらっしゃるファンの声援のありがたさを実感しました。僕たちアナウンサーもファンの声援に乗って話していたんだ、ということを再確認しました」

選手の一挙手一投足にファンの反応は変わる。ホームチームの声援やため息、ビジターチームの声援などにも、森アナの声は自然と反応してきた。無観客試合では、ファンの声は聞こえず、他局のブースの声が耳に入る中での難しさも生まれたという。

開幕カードの神宮球場でのヤクルト-中日戦では、無観客のため放送ブースの声がグラウンドに聞こえることが指摘された。「僕は20年以上前に経験しました」と森アナは笑う。いまはなくなったがナゴヤ球場の放送ブースはネット裏のグラウンドレベルにあった。新人アナはナゴヤ球場の2軍戦で、仮想実況で腕を磨いた。「夏で窓を開けて、『キャッチャーが左に寄った』とか練習していたら、ビジターチームのコーチに注意されました」。

7月10日広島戦からナゴヤドームは5000人限定で観客を入れる。それでも声援は控える方針だ。少ないファンの存在をバックに、ベテランアナがどう中継するか注目、いや耳を傾けてみてください。【中日担当 伊東大介】