「虎仙会」がタイミングよく開催された。きょう1月22日は星野仙一の誕生日。1947年(昭22)生まれで生きていれば満72歳だった。昨年1月4日にこの世を去ってから2度目の誕生日になる。

毎年、お祝いの電話をしていた。最初は遠慮していた。だが星野を知る人から「そういう連絡はカントク、意外に喜びますよ」と言われ、毎年電話をするようになった。「おめでとうございます」と言うと、返ってくる答えはいつも同じだった。

「なんじゃあ。何がおめでとうじゃ。もう○○歳やぞ。何がめでたいんじゃ。…でもありがとうな。おう」

憎まれ口をたたいてから一転、人懐こいあの調子で話しだすのがいつものパターン。最初はドキッとしたがだんだん、こちらも慣れ「相変わらずしぶといですな」などと減らず口をたたくようになった。

以前にも少し書いたが不思議で仕方がなかったのが星野の携帯電話である。亡くなるまでいわゆるガラケーを使用していた。こちらからかけると「なんじゃ~」と、当然、番号通知で当方を認識した上で取っている様子だった。

誰からの電話に対してもそういう感じだった。星野の人生を考えれば電話番号を知っている人間など無数にいるはず。限りあるメモリーに収容しきれているのか。一体、どうなっているのか。直接、聞きたかったが、結局、チャンスはなかった。

それにしても。星野はすぐに電話に出た。誰もが知る著名人であることを考えれば一般的ではないと感じる。人間が好きだったというのは根底にあるが同時にさまざまな情報を得てやろうという姿勢もあったのだろう。阪神監督時代に「担当記者も戦力」と言い切ったのは有名な話だ。

新監督として新たなシーズンに臨む矢野燿大もその発想は受け継いでいるようだ。質問をしてくる記者たちに対し逆に問い掛けることが多い。「いい方法あったら教えてよ」「外国人、いいの、おったら教えてや」。星野に比べればソフトだし、情報を生かすのも今後の話だとは思うが姿勢はとても評価できる。

前任者の金本知憲にもそういう部分はなくはなかったのだが前面に出すという部分では矢野の方がハッキリしている。良い意味でメディアを利用した星野のように、したたかになれるか。阪神監督という特別な立場で大事になる要素だ。キャンプを前にそんなことを考えている。(敬称略)