野球手帳

トライアウトの魅力 まだやれる好選手の発掘楽しみ

<12球団合同トライアウト>◇12日◇大阪シティ信金スタジアム

10年ほど前から、プロ野球の12球団合同トライアウトを取材あるいは趣味で観戦している。今年は12日、大阪シティ信金スタジアムで行われた。例年のようにスピードガンが表示されないという残念な点もあったが、内野スタンドは半分以上が埋まっていた。オファーがなければ、選手にとっては最後にファンや家族の前でプレーを披露する場となる。西武小石博孝投手は「埼玉西武ライオンズの小石博孝です。今日はよろしくお願いします」と、大きな声でファンに自己紹介してからマウンドに向かった。地元選手以外では珍しく、大勢からの拍手で迎えられた。こうした光景はすがすがしい。

トライアウトを終えファンにあいさつに向かう西岡剛(中央)ら選手たち(撮影・上田博志)
トライアウトを終えファンにあいさつに向かう西岡剛(中央)ら選手たち(撮影・上田博志)

今年からルールがいくつか変更になっていた。トライアウトの受験機会が通算2度までに制限された。関係者によると、昨年は3度までだったという。以前はNPBから解雇された後、毎年のように受験する独立リーグの選手も少なからずいた。2011年には「8度目の挑戦です」という元ロッテの小林亮寛投手もいた。今後はこうした例はなくなる。

トライアウトの何が魅力か。好選手の発掘が楽しみなのだ。ひそかな願望として、プロ野球のスカウトがある。今年は、巨人で3月に育成から支配下登録されながら、戦力外になった坂本工宜投手の投げっぷりが目に留まった。2段モーションから繰り出す真っすぐにも切れがあり、スライダー、フォークにも切れと制球があった。坂本工は戦力外通告に「来年はと思っていたのでびっくりした」としながらも「NPBだけを狙って、まだまだやれると思っている」と話した。トライアウトでの好投には、あるパ・リーグ球団の関係者も評価していた。昨年は廖任磊投手と山下亜文投手に目を奪われたのだが、トライアウト後に西武と巨人入りが決まった。坂本工はどうなるか、期待したい。

スポーツ新聞の記者としては、投打二刀流で挑戦したヤクルト山川晃司捕手の投球ぶりが目を引いた。ほとんど投手の経験がないのに、打者3人から2三振を奪った。投げ方を教わったことがなく、ほぼ自己流の捕手投げ。それでも、地肩の強さで直球にはスピードがあり、ユーチューブを視聴して、有名選手のまねをしたという握りの変化球も切れていた。

強肩捕手が投手に挑戦したら、どうなるか。この日はプロスカウトとしてスタンドにいた元阪神の久保田智之氏は、滑川高校時代に背番号2の捕手として甲子園に出場した。ヤンキース田中将大は小学校時代に坂本勇人とバッテリーを組んでいた捕手だった。山川は捕手としては通算5年間で1軍出場が果たせなかったが、投手として、いつの日かNPBの舞台で見てみたい。中学でも高校でも投手経験がない代わりに、伸びしろだけは大いにあると思うので。【斎藤直樹】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

 野球をこよなく愛する日刊スポーツの記者が、その醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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