藤浪晋太郎が「大阪のおばちゃんみたい」と表したサードユニホームを着て阪神は連勝だ。この派手なユニホーム、レプリカが売れているらしい。同じ模様のマスクも相当、評判がいいようで営業部は「チームと一丸になって頑張っています」と張り切る。

それにしてもこのデザイン。じっと見るとあることに気がつく。背中側から見ると黄色に黒のギザギザのラインが横に走っている。ギザギザだけど明らかに「横ジマ」ではないか。阪神と言えば「タテジマ」が代名詞。それが横ジマとは。ここで往年の虎党なら、あのセリフを思い出すはず。

「阪神を改革するには絶対に必要。チームの旗頭になってほしい。本当に変えるためにはタテジマのユニホームを横ジマに変えるぐらいの意気込みがいる。そのために君が必要なんや」

96年オフ、翌年から自身3度目の指揮を執る吉田義男(現・日刊スポーツ客員評論家)が“ある席”で訴えた言葉だ。そう、清原和博との入団交渉である。

96年オフ、西武からFA宣言した清原の獲得へ巨人と阪神が名乗りを上げた。特にそのシーズン、お隣のオリックスが日本一に輝くのを尻目に最下位に甘んじた阪神は必死だった。清原との交渉の席で、吉田はそう熱く訴えたのだ。

結局、清原は長嶋茂雄率いる巨人に移籍。阪神は「番外編TG戦」に敗れた。それから四半世紀。今回、横ジマを着ていた阪神のスタメンにFA戦力は見当たらない。生え抜き選手と助っ人で首位を走っている。

特にこの試合はルーキー中野拓夢が攻守に光った。7回、中野の2点適時打がなければどうなっていたか分からない展開だった。7回表に期待に応えられなかった同じくルーキー石井大智を救う一打にもなったのではないか。この日は快音が出なかったが佐藤輝明の存在感もいい。スタメンで2人が新人というのは虎党にはうれしい部分だ。

ところで派手なこのユニホーム、今回はお披露目だった。本番は7月。球団が「ウル虎の夏2021」と題する7月9~11日の巨人戦と同12~14日のDeNA戦(ともに甲子園)の計6試合で着用する。

再び、これを着る3カ月後も現在のような状況なら悲願も現実的になるはず。もちろん油断は禁物。この試合は教訓になったはずだ。今季初の東京ドーム、GT戦に、しっかりと生かしてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)