日本高野連は29日、大阪市内で理事会を開き「投手の障害予防に関する有識者会議」の答申を全会一致で承認した。

来春のセンバツ(3月19日開幕)から「1人の投手の1週間での総投球数を500球以内にする」投球制限を導入する。

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▽明徳義塾・馬淵史郎監督 1週間で500球というのは、一番妥当な線だと思う。1試合で制限すれば、(戦力面で)県立校が不利になる。これだけ選手の体調面が問題になれば、対策を出さないといけないだろう。1人の投手では勝てない時代になったということ。勝ち負けというにおいては、投手起用で監督の手腕も問われる

▽帝京・前田三夫監督 当然、今までより多数の投手をそろえ、対戦カードなどで戦略も練らないといけない。自チームの投手だけでなく、相手投手の状態、球数も把握しないと。より事前の準備、情報が必要になる。ただ、やりくりは難しくなるが、やっていくうちに慣れるだろうし、不安はあまり感じていない。

▽花咲徳栄・岩井隆監督 一時の障害予防としては非常に得策だと思います。第2段階として「スポーツと医療」まで議論していただければ。海外のように、教育機関の中にスポーツのドクターが入れる環境になればなと思います。

▽市ケ尾・菅沢悠監督(横浜の公立校で独自の球数制限を運用中)「夏以降の2カ月半で、一番投げてきた部員でも合計1200球でした。1週間500球だと、影響のない学校の方がまだ多い気がします」

▽興南・我喜屋優監督 決まったことに従うのは当然のこと。ただ、思うところはある。体を強くする練習を行い、監督も選手の体を把握できれば、連投には耐えられるし、こんな問題は起きないはず。沖縄には部員が足りないチームがたくさんある。球数制限で野球界に格差社会が生まれるのではないか。高校野球100年の歴史で語り継がれるような心身ともに強いスーパーヒーローも出てこなくなるでしょう。

▽今秋のU18W杯日本代表でヘッドコーチを務めた八戸学院光星・仲井宗基監督 高校生の体のことを考えてのことですし、意識改革にもつながるとは思うが、1週間の区切りがどこなのかなど、漠然としている部分もある。地区によって開催日程の違いもある。僕はあまり多く投げると(質が)落ちる考え方なので、練習を含めてさせていない。

▽PL学園・中村順司元監督(73) 時代が大きく変わるなという思いです。球数制限導入が決まったのならそれに備えて準備しないといけませんが、複数の投手を育てられるチームとぎりぎりの部員数で活動しているチームとの差が出ないかどうかが気にかかります。また待球作戦が変な方向に行かないかも心配です。かつては打倒私学に燃えて1人で投げ抜いて勝ち上がってくる公立のエースがいて、そういう選手の活躍が共感を呼んできました。自分の限界と闘い可能性を伸ばしていくという高校時代しかできない経験を積み、社会に出たときに支えとなるたくましさを育んできた。高校野球のよさでした。申告敬遠も含めて新しい歴史を作っていくのは大事なことですが、大きな変化に一抹の寂しさも感じます。

▽履正社・岡田龍生監督 (故障などを考えて)賛成といえば賛成。高校野球というよりも野球界全体として、成長していく段階に合わせてプログラム的にやっていかないと意味がないのでは。もっと小さい時から球数制限をしたりとか。医学的根拠もあって言っているわけだから、ある程度は聞かないと。(1週間500球は)そんなものではないか。

▽龍谷大平安・原田英彦監督 延長12回以降(タイブレーク)とか今回の球数制限も時代の流れ。逆らえない。センバツも準決勝後に休養日を導入して、1週間で500球は投手の精神面、体力の負担は軽減されると思う。(球数は)もう少し縛りがきつくなると思ったけど、妥当なところ。複数投手を育成して、対応できるように練習していく。(申告敬遠は)試合の中で流れが止まったりいらない間ができたり、野球は流れが必要なので。いち早く対応できるように。

▽横浜高・渡辺元智前監督 1週間で500球以内というのは余裕がある数字だと思います。今後は練習にも目を向けないといけません。15歳から18歳という伸び盛りの時期に、指導者はいい投手に育てたいという思いから、練習で投げさせすぎるかもしれません。そうなったら意味がないですからね。現場の動向を見守りたいと思います。一方で、申告敬遠も含め、あまりに早く事を進めると、これまでの高校野球のいいところを失うこともあります。将来の高校野球発展のために、導入後も不都合があれば調整していく必要があるでしょう。