マー復帰で、貧打にも、連敗にも、単独最下位にもオサラバだ。阪神打線が12試合ぶりに2桁安打の猛攻や。マット・マートン外野手(33)が5番で2試合ぶりスタメン復帰。第1打席に自身の連続打席無安打を13で止めると、4試合ぶりのマルチ安打。主軸に頼もしい姿が戻り、チームの連敗も3でストップ。さあ、逆襲に転じるぞ。

 試合後、マートンは左翼へと続く帰り道を歩いた。嫌というほど聞いてきた虎党のヤジが、熱い声援に変わっていた。途中で足を止めると、金網越しに喜びを分かち合った。終始、無言を貫いてきた男が一言だけ口を開いた。

 マートン いい勝利だったと思うよ。

 2試合ぶりに名を連ねたスタメン。10日広島戦の欠場は、不振に限定すると3年ぶりの緊急事態だった。それでも和田監督の信頼で4月21日以来「5番左翼」に戻ることができた。真価が問われる神宮の夜。2回の先頭では早速ヤクルト新垣の外角球をピンポイントで捉えた。右翼線付近に14打席ぶり安打となる二塁打でチャンスメークするとスイッチが入った。

 エンジン全開の男は続く福留の二ゴロで三塁に進んだ。7番伊藤隼の右飛で下した決断は本塁突入。右翼雄平のダイレクト返球に体を固めた。次の瞬間には、捕手西田へ体もろともぶつかっていた。判定はアウト。すると、無意識にほえていた。両軍が飛び出し、一触即発の雰囲気が漂った。単独最下位のチームに失われかけていた熱い闘争心が戻った瞬間だった。

 時に高まりすぎた感情が議論を呼ぶ。だが、どこまでも周囲を思い行動するのがマートンの素顔。昨夏には連戦中にアクションを起こした。東京遠征の最終日はナイター。翌日の移動日も午後6時から甲子園でのゲームがあった。練習の開始は午後2時。そんな中、品川から飛び乗ったのは午前6時台の新幹線だった。午前10時には大阪でボランティア活動を開始した。1人で決めた行動を周りにはこう漏らした。

 「本当はオフシーズンにできたらいい。でも、シーズンが終わったらアメリカに帰ってしまう。だから今なんだ」

 球場でもファンサービスへの積極的な姿勢はチーム随一。そんな日常の姿を知るからこそ、神宮の、全国のファンは振り向いてくれた。6回には左前打でマルチ安打をマーク。直後に福留の1発が飛び出すなど、5、6番コンビで貴重な追加点をたたき出した。

 左腕は半袖。右腕は長袖。昨年9月にも見せた装いでマートンは確かに復活した。先発野手全員が安打を放ち、12安打を記録。2桁安打は実に12試合ぶりだった。スカッとする攻撃で連敗も3で止め、単独最下位も脱出。負の連鎖を断ち切った中心には、笑顔のマートンがいた。【松本航】

 ▼阪神打線が12安打を放ち、12試合ぶりで今季6度目の2桁安打。先発野手全員安打は今季初で、14年8月19日中日戦(京セラドーム大阪)以来。