阪神福留孝介外野手(38)の表情はさっぱりとしていた。かすかに聞こえてくるコイ党の歌をバックに、ベンチ裏の階段を上がる。第一声は「う~ん、仕方ないね」。3点ビハインドでの9回1死一、二塁。1発が出れば同点の場面で、広島中崎の初球を引っかけた。二塁併殺打でジ・エンド。それでもアプローチに後悔はなかった。

 「打てるボールを打つのはいつも通りのことだよ」

 最後はため息が充満したが、そこまでは1安打3四球の4出塁。貫禄の前半戦フィナーレだった。

 仲間が苦しい場面で働く姿は、前半戦の84試合を象徴していた。初回は2死走者なし。直前で2番俊介が併殺打に倒れ、先制モードがしぼんだところですかさず攻撃だ。広島先発薮田の138キロを捉えた。得点にこそならなかったが、中前打で相手への流れを断ち切った。そんな38歳を、指揮官は試合前にたたえていた。

 和田監督 バッターの方ではやはり福留(がMVP)ですね。点が取れない中で劇的というか、誰も打てないときこそ福留が打つという、勝利を決めるような1発、一打を打ってくれた。だいぶ勝ちを拾ったような気がする。

 文句なしの野手MVPだ。5月27日楽天戦では延長11回サヨナラ本塁打。6月27日DeNA戦では同点、勝ち越しの2打席連続本塁打など、勝負強さは群を抜いていた。昨年の前半戦終了時点では打率2割1分1厘、2本塁打13打点。それが1年経過して、打率は2割7分5厘、15本塁打はチームトップ。45打点もチームトップタイに跳ね上がった。その足跡が色あせることはない。

 「それは誰もが思うこと」と、勝利で締めくくれなかった悔しさはある。だが、振る舞いはすでに後半戦を見据えていた。4日間の調整を経て、元気に戦いの場へ戻ってくる。【松本航】