宇宙的パワー全開のDeNA井納翔一投手(31)が、投打で奇跡的な活躍をし、1-0の勝利に導いた。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(S)第3戦、2回に自ら先制適時打を放った。本職の投球では6回途中まで広島打線を0封。この1点が決勝点となって勝利。昨季CSファイナル第3戦で広島黒田に投げ勝つなど、CSで2勝を挙げたパワーをここでも発揮した。チームは勝敗をアドバンテージ含めて2勝2敗の五分に戻した。

 宇宙的感覚を持つ井納は、大一番でもピュアだった。2回の攻撃。2死一、二塁。1-1から内角をえぐる149キロ直球に食らいついた。ベースギリギリに立って待った3球目。二塁手・菊池の頭上をふわりと越えて、先制タイムリー。一塁上で、ガッツポーズ代わりに両手を上げて笑顔でバンザイした。「ファーストステージよりも自然体で入れた」という感情を素直に表した。

 幸運が舞い込みピンチでことごとく救われた。2回裏の守備では球が高く浮かないようにと、マウンドに指で「高さ」と書いた。6球すべて低めに集め1死一、二塁のピンチを併殺打で乗り切るとあらん限りのガッツポーズを見せた。本職の投球では闘志爆発。試合前日には、そんな運を引き寄せる願掛けもしていた。

 昨季、ファイナルS第3戦、引退した黒田氏との投げ合い前夜に入った広島市内の和食店「黒田」に、女房役の嶺井と向かった。1年前“黒田を食う”ために食べたクエ鍋を今回も完食。昨年と同カードとはいえ、黒田氏はいないにもかかわらず、なぜか験担ぎ。その宇宙的直感が見事にはまり「嶺井と話した攻め方ができた」と不敵に笑った。

 昨季CS2勝の勝ち運を買われ、託されたファーストS阪神戦第1戦では6回に2ランを浴び1球に泣いた。ベンチに戻る際、「すいませんでしたっ」と叫びながら降板したが、ちょうど同じタイミングで野手は円陣を組んでいたため、ベンチには誰もいなかった。そんなちぐはぐだったファーストSとは打って変わって、井納ワールドが全開。「去年、広島に力の差を見せつけられた。日本シリーズにいきたいだけではなく、リベンジの気持ちもみんな強いと思う」。異次元の純粋な気持ちが勝利をもたらし2勝2敗。宇宙人ならぬ野球人としての大役を果たした。【栗田成芳】