広島が、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでDeNAに4連敗を喫し、日本シリーズ進出を逃した。今CS初の4番に座った新井貴浩内野手(40)は、6回にバックスクリーン左へ豪快ソロ。反撃ムードをつくったが、勢いは続かず、まさかの4連敗で今季の戦いが終わった。存在感を発揮したベテランは、来季も欠かせぬ戦力だ。

 新井は何度も「悔しい」とうめいた。昨年逃した日本一への道が途絶えた。

 セ王者のプライドを胸に、ベテランは崖っぷちに追い込まれたチームを鼓舞した。真っ赤なスタンドが静かになった4点ビハインドの6回。4番に入った主砲が豪快なアーチを描いた。DeNA三上の143キロをたたいた力強い打球は、センター方向へ伸び、バックスクリーン左に突き刺さった。40歳9カ月で記録した自身ポストシーズン初本塁打も、CS敗退に気持ちの整理が追いつかなかった。

 「悔しい。それしかない。悔しい。終わったばかりで、それしか出てこない」

 後がなくなったCSファイナルステージ第5戦、緒方監督に今CS初めて4番を託された。チームは前日まで4戦で計21安打、8得点。レギュラーシーズンでは2割7分3厘だったチーム打率は1割9分3厘と強打は影を潜めた。8月31日巨人戦(東京ドーム)以来の4番として、正念場のチームの先頭に立った。

 今季はシーズン途中から代打での起用が増えた。それでも7月7日ヤクルト戦(神宮)では代打逆転3ランを放つなど、試合の流れを変える勝負強さを発揮。存在感は絶大で姿を見せるだけで、マツダスタジアムの空気を変えられる存在だった。

 日本一を目標にした戦いは、4連敗で敗れ去った。チーム打率2割1分1厘に終わる中、新井は13打数5安打。打率3割8分5厘は2桁打席立った打者ではトップ。存在感は40歳の今季も変わらない。激闘を終えたばかりのベテランは「終わったばかりだから」と去就の明言は避けたものの、来季も現役でプレーする方向だ。

 忘れ物もある。リーグ3連覇だけでなく、あらためて厳しさを知ったCS突破。そしてその先に日本一がある。またすぐに始まる戦いに、「新井さん」は欠かせない。【前原淳】