今年のバレンティンは、ひと味違う。

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(33)が6回1死三塁から先制の適時二塁打を放つと、8回無死二、三塁ではダメ押しの2点適時二塁打で試合を決めた。

 陽気でマイペースの助っ人は、今季はチームプレーを最優先。来日8年目で新境地を見せる男の3打点で、チームは貯金2。一丸となって首位DeNAに食らいつく。

 二塁に到達すると、バレンティンは両こぶしを突き上げ、ほえた。0-0の6回1死三塁。カウント1ボール2ストライクから、阪神秋山のフォークをコンパクトに仕留めた。力感はなくても、打球は悠々と左翼の左を抜いた。均衡を破る一撃に「何とかバットに当てようと思った」とホッとした表情を見せた。

 打ち気満々になってもおかしくない場面で、軽打ができるのが今年のバレンティンだ。11年から通算220本塁打。フォロースルーが大きなフルスイングが持ち味だが、今季は状況に応じた打撃を見せる。そこには来日8年目、33歳の助っ人の心境の変化があった。「自分も1年1年、年を取る。これまでどれだけ活躍しているかはみんなも知ってくれていると思う。それでも去年は(96敗で)悔しかった。とにかく勝ちたい。みんなで活躍したい」。

 自分だけ打てればいいという考えは消した。前カードの中日戦で12打数1安打と集中力を欠き、前日13日は先発を外れた。それでも試合中は三塁側ベンチ最前列に陣取り、野太い声を張りあげた。「後から出る選手はベンチで声を出して盛り上げて自分のパフォーマンスを出す。彼らの応援が、いい結果を出そうと高ぶらせてくれる」。いつも自分がしてもらっているように、声援を送り続けていた。「今年は出ている選手、出ていない選手関係なく、一体感を感じる」とフォアザチームを貫いている。

 守備では4回に左前打の処理を誤って二進を許したが、8回無死二、三塁では2点適時二塁打でダメを押した。2安打3打点で2連勝に導いても「みんながお膳立てしてくれたおかげ」と当然のように言った。コメントにも打撃にも、深みが出てきた。【浜本卓也】