阪神がファーム日本選手権で巨人を8-4で下し、12年ぶり5度目の優勝を飾った。矢野2軍監督が今季選手に求め続けた「超積極野球」で4回に一挙6得点を挙げるなど、会心の逆転G倒。ルーキー熊谷が最優秀選手(MVP)に選ばれるなど「矢野チルドレン」が活躍しての頂点だった。1軍は今季Aクラスを逃す悔しいシーズンとなったが、若虎のたくましさが未来を明るく照らす。

「超積極野球」を貫いた先に、日本一が待っていた。勝利の瞬間、選手がマウンドに駆け寄り、矢野2軍監督も後を追うように歓喜の輪の中へ。満面の笑みを浮かべ、4度宙に舞った。「本当にめちゃくちゃうれしいですし、うちの野球がしっかりできて勝てたのが、よりうれしい。最高の胴上げになりました」。ファームの頂点をかけた今季最後の一戦は「矢野流野球」が凝縮された試合だった。

1点を追う4回だった。先頭の高山が初球打ちで右翼線二塁打。続く板山が中前打を放ち、すぐに同点に追いついた。山崎の押し出し死球で勝ち越し、なおも1死満塁の好機でルーキー熊谷が2球目を仕留めて左前適時打。積極的な攻撃が、この回一挙6得点の下地となった。熊谷は2安打1打点1盗塁で最優秀選手(MVP)に選ばれ「緊張感のある中でやれたので、いい経験になった。チームに貢献できて良かった」と振り返った。

矢野監督は選手1人1人に寄り添い、技術よりもまず「心」に重点を置いた。今季開幕2軍スタートも、6月下旬から1軍のレギュラーに定着した北條もその1人。「ダメな時でも首脳陣から見て、使いたいと思わせる選手になれ」。その言葉を受けた北條は「結果が出なくてもすぐ切り替えることができたのはそういう言葉のおかげかなと思います」と感謝を口にしていた。矢野監督自身の考えとして「俺の一番は心技体の絶対『心』。ハート、メンタルがなんとかなれば、俺は技術もついてくると思っている。そこをすごく意識した1年やった」。選手の心を前向きにする地道な取り組みの結果が日本一だった。

来季1軍ヘッド格での就任プランも判明している矢野2軍監督は、優勝インタビューで「1軍は本当に苦しいチーム状況ですけど、僕は将来を見据えた時に楽しみな選手がたくさん出てきてると思っています。近い将来一緒に強いチームを作っていきましょう」。今季Aクラスを逃した1軍の逆襲を力強い言葉で誓った。虎党が長年待ち続けている1軍の日本一へ。その序章となるに違いない。【古財稜明】