プロ野球の発展に大きく貢献した野球人に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が20日、都内で開かれ、ソフトバンク工藤公康監督(55)が3年ぶりに選ばれた。3度目の受賞は、ソフトバンク王貞治球団会長の4度に次ぎ、原辰徳氏、秋山幸二氏と並ぶ2位タイ。チームを2年連続で日本一に導いた手腕が評価された。

正力賞において、日本一監督の価値があらためてクローズアップされた。選考委員の座長を務める王会長は「いろいろ意見が出ましたが、シーズン2位から勝ち上がって日本一になった。今年のシリーズは内容のある、語り継がれるシリーズになる」と説明した。リーグ優勝を逃した監督の選出は、10年にリーグ3位から日本シリーズを制したロッテ西村監督以来となる。

日本シリーズでの采配が、選考委員の心を捉えた。工藤監督は第5、6戦でベテラン内川に送りバントを命じた。内川の犠打は、横浜時代以来8年ぶりだった。門田委員は「スターの主力に2日続けて送りバントをさせる。勝負の厳しさ、執念を見た」。武田を第2先発として救援待機させるなど短期決戦用の大胆采配で2年連続優勝を導いた。

対抗馬には、巨人以外で初めて3年連続セ・リーグ優勝した広島の緒方監督が挙がった。中西、杉下委員が選手育成の手腕に高評価を与えた。だが、広島OBの山本委員から「日本一にするべき」との意見が出た。緒方監督には「来年に期待する」との意見で一致した。【斎藤直樹】

◆ソフトバンク工藤監督のコメント 大変栄誉な賞を頂くことができ、正直、びっくりしています。この賞はチームに頂いた賞だと思っています。パ・リーグ代表チームとして、最終目標である『日本一』にむけて、選手たちが本当によく頑張ってくれたと思っています。今年ほどたくさんの人の関わりと頑張りがあってチームが成り立っている事を実感したことはありませんでした。球団職員、チームスタッフのみなさんにも感謝しております。

◆正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に大きな功績を残した正力松太郎氏を記念し、77年に制定された。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に、選考委員が選出する。受賞者は日本一に輝いた監督が多く、最多は4度選ばれた王貞治氏。04年に米大リーグのシーズン最多安打記録を更新したイチロー(マリナーズ)と13年に24勝0敗でチームの初優勝に貢献した田中将大(楽天)に特別賞が贈られた。賞金500万円。

◆選考委員 王貞治(ソフトバンク球団会長)杉下茂、中西太、山本浩二(野球評論家、解説者)門田隆将(ジャーナリスト)