BC新潟の稲葉大樹野手コーチ兼内野手(34)が来季に向けて始動している。BCリーグとチーム創設の07年から在籍し、来季は13年目になる。独立リーグ在籍年数と通算安打878本は、すでに前人未到の域に達している。自身の記録を更新し続けるとともに、野球を極める道を進む。

オフの間も野球に取り組む稲葉の姿勢はシーズン中と変わらない。5日に来季の契約を交わした。その後、日中はチームメートとともにグラウンドに出てボールを扱う。筋トレ、体のケアを行い、夕方はBC新潟が開講している野球塾で少年たちを指導。「契約と同時に来季は始まっている」。19年はプレーイングコーチとして5年目、在籍13年目。備えに隙はない。

今季は50試合出場で打率2割5分9厘。878本まで重ねた通算安打は「来季中に1000本を達成させたい」。来年8月には35歳になる。ステップアップの場でもある独立リーグで、足跡のない道を歩み続けてきた。「1球、1打席に集中している。それだけです」。もちろん「可能性が低いのは分かっているが、プロ(NPB)は諦めていない」。土台にあるのは尽きない向上心。そして「多くの方々への感謝」だ。

10月8日、ファンで親交があった糸魚川高野球部マネジャーの水島奈摘さんが心不全のため、18歳で亡くなった。06年に野球の試合直前、9歳で亡くなった兄樹人さん、新潟にプロ野球チームができることを願っていた樹人さんのために活動し、BCリーグ創設のきっかけをつくった母正江さんも、13年に48歳で心不全で亡くなっている。

「正江さんがいなかったら、BCリーグでプレーすることはなかったし、今の自分もなかった。3人に背中を押されている」。自分のためであり、周囲のため。グラブを手にし、バットを握る価値は「引退したときに分かると思うし、それでいい」と言う。力を蓄え、出し尽くす。19年もそんな1年を過ごす。【斎藤慎一郎】

◆稲葉大樹(いなば・ひろき)1984年(昭59)8月22日生まれ、東京都出身。安田学園(東京)から城西大へ。4年の秋に、遊撃手で首都大学リーグベストナインに選出される。卒業後、クラブチームを経て07年5月に新潟に入団。11年に首位打者を獲得。17年は通算5度目のベストナインを獲得。15年からコーチ兼任。171センチ、80キロ。右投げ左打ち。