<親御さんのためのアナウンス講座(3)>

少年野球の試合で、親御さんが務めることが多い場内アナウンス。プロ野球、千葉ロッテマリーンズの名うぐいす嬢、谷保恵美さん(53)に全3回にわたってコツを聞く「アナウンス講座」も最終回。上手なアナウンスに必須の「予測」と語尾について、話していただきました。【取材=鎌田良美】

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-実際に少年野球のアナウンスを聞いたことはありますか

「マリーンズカップ(千葉県中学硬式野球大会)の時は、決勝だけ頼まれるんです。その前の試合までは、お母さんたちがやっているのをたまに見かけます」

-見て気付いたことは

「やっぱりアナウンスが、プレーが始まる前までに終わらない。急いでるんだけどなかなか追いつかない。待ってるわけにもいかずプレーが始まってしまう。というのはありましたね」

-どうすれば改善できるでしょう

「次の回は交代あるのかなと、ちょっと気にしてるだけで心の準備ができます。先を読むと早め、早めにアナウンスできる。そうすると、気持ちも楽になるだろうなって思います」

-目の前のプレーだけに気を取られると、視野が狭くなりますね

「なので、周りに目を配りましょう。例えばプロなら、ああもうキャッチボールしてないから投手交代だなとか。少年野球だとピッチャーの子が外野にいったり、グラウンドの中で守備位置が変わるんですよね。シート変更が激しいのかなと思います。なるべく、その打席に間に合うように話す。プロ野球でも審判さんがゆっくりしてると、早く早く! って思うくらいなので、難しいですけど」

-谷保さんのアナウンスといえば、語尾を伸ばす「サブローーーー」が有名です

「あれはご本人の要望ですけど(笑い)、語尾は落ちるより上げた方が聞き取りやすいというのは経験上、あります。あとちょっと明るく聞こえる。(現楽天の)今江さんもそうで、最初は語尾を下げて呼んでいたんですけど、聞きづらいなと。それでだんだん『いまえーーー』と上がっていきました」

-名前を聞き取りやすく読むには

「『ほり』のように2文字や、『ふくうら』のように『う』の段が重なる名字なんかは、『ふくーらー』と大げさくらいにゆっくり、はっきり。ロッテなら三木亮選手が名字も名前も短いので、聞く側に回ってゆっくりアナウンスします。逆に外国人選手は文字数が多い。ご本人には通じてないかもしれないですけど、まず日本のお客さんに優先して聞き取れるように、ということですよね」

-最後に、場内アナウンスに挑戦している親御さんたちにメッセージをお願いします

「私もこうやって球団にいて、愛情があるからすごく力が入るじゃないですか。お母さんたちも、子どもたちがいるから力が入る。うまい、へたもあるかもしれないですけど、親御さんがやってる意味ってそこにあるんだろうなと思います。試合に負けていても、イニング頭にちょっと声のボリュームを上げたり。お母さんもやってるよ! って元気を子どもに伝えるくらいの感じで話しましょう。ちょっと息子に腹が立つことがあってもね、元気に!」(おわり)

◆谷保恵美(たにほ・えみ)1966年(昭41)5月11日生まれ、北海道・帯広市出身。90年ロッテオリオンズに経理担当として入社。91年から場内アナウンス担当。1軍公式戦アナウンスは昨年5月18日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)で通算1700試合。連続記録は96年10月1日の近鉄25回戦から現在も継続中で、昨年6月1日の広島戦で1500試合に到達した。16年に引退したサブロー外野手をアナウンスする「サブローーーーー」のコールは千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)の名物だった。広報業務も兼務する。