阪神近本光司外野手(24)が新人王猛アピールの8号決勝弾を放った。同点の3回に広島床田から右越えの勝ち越しソロ。プロ最長125メートルの“ポパイ弾”だ。新人では、1980年(昭55)の岡田彰布を抜く球団6位の112安打とし、猛打賞10回はセ・リーグ記録の58年長嶋茂雄の14回に迫る勢い。ヤクルト村上らと新人王を争う背番号5の大活躍で、3位広島との差を再び3・5に縮めた。

   ◇   ◇   ◇

クルッと近本は回った。真芯で捉えた打球は、右翼ポール際へ一直線。フェアかファウルか…。立ち止まって打球の行方を見つめた。打球はポールの内側ギリギリを通過してスタンド中段に着弾した。80年岡田彰布を抜く球団新人6位の110安打目。一塁塁審が大きく右手を回すのを確認し、背番号5が歩き出した。

「(打球が)切れるか切れないか、わからなかったので、見ておこうと思って。自分では出塁を考えていた。結果から見れば最高の形になりました」

同点の3回に“驚弾”を描いた。「スラ、スラときていたので、1球(直球を)狙ってもいいかなと」。カウント2-0からの141キロ直球を強振した。勝ち越し決勝の8号ソロは自身プロ最長、推定125メートルを飛ばした“ポパイ弾”だ。

しっかりした体の軸回転が、長距離砲並みの飛距離を生んだ。170センチと小柄でも、遠くにボールを飛ばす技術は一級品。そのルーツは淡路島での東浦中学軟式野球部時代にある。全体練習終わりの「強振ロングティー」だ。右足を高く上げる一本足スタイル。軸ができ、その場でクルリと回る。バットに体重をうまく乗せて解き放つことで、打球が飛ぶ。内角球にも対応できる。常々「野球の基本は強く振ること」と話すように、フルスイングの信念は少年時代からある。

1本では満足しない。「勝っている展開でも、負けている展開でも、出塁してホームにかえってくること」。1番として強い役割意識がある。勝ち越し弾の後も8回に二塁打、9回にも安打を放って10度目の猛打賞。セ・リーグ新人記録の58年長嶋茂雄の14回も射程圏にとらえた。

主に1番のレギュラーで打率2割8分1厘、8本塁打、31打点、21盗塁。ヤクルト村上らと新人王争いで猛アピールを続ける。特にここ5試合は20打数12安打の打率6割と絶好調だ。矢野監督は「内容もよくなってきている。(本塁打は)もちろんうれしいけど、数多く塁に出ることが相手にとって嫌。そういう状態が上がってきた」と評価。ツボにハマればアーチストの弾道も描ける。負ければ5・5に広がっていた3位広島との差を再び3・5に詰めた。ヒットマン近本が逆襲を引っ張る。【真柴健】