完全復活!! 広島野村祐輔投手(31)が8回4安打無四球無失点の快投で今季初勝利を手にした。5回まで完全投球するなど会心の試合運びで、中日打線を手玉に取った。19年8月8日DeNA以来356日ぶりの白星。プロ9年目にして初めて開幕1軍を逃した右腕が、復活を印象づける投球で、チームを1日で最下位脱出へ導いた。

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野村は一塁側ベンチ前でナインを迎え入れる際、佐々岡監督から祝福の肩もみをされ、満面の笑みを浮かべた。8回4安打無四球無失点。文句なしの内容で念願の今季1勝目を手にした。「すごくうれしいですし、まだまだこれから頑張っていかないといけない」。19年8月8日DeNA戦(マツダスタジアム)以来、356日ぶりの白星だ。

完璧な立ち上がりだった。直球の最速は139キロながら、スライダーなど変化球を巧みに操り、両サイドを丁寧についたようにみえた。「丁寧にはいってないです。大胆にいきました」と本人は丁寧さを否定し、攻めの姿勢を強調。5回まで1人の走者も許さない完全投球を見せた。6回に初安打されても、安定感抜群の投球で得点を許さなかった。「右も左も外角が良かった。要所で内角を攻めて、打者をつまらせることができた。(スピード)ガン以上に打者を差し込むことができた」と97球の力投を振り返った。

「ケガで出遅れてしまって、本当に悔しかった」

プロ8年間で71勝の実績を誇る右腕。2月の春季キャンプ序盤に右ふくらはぎを痛め、無念の離脱。ファームで長期にわたり、調整を続けていた。2軍の練習拠点の広島・廿日市市内の大野練習場では若手投手陣の“先生役”を買って出た。練習中に身ぶり手ぶりを交え、長い時間をかけて後輩に接する姿があった。「聞かれたことにはちゃんと答えたいのはあったし、自分にも言っている感じ。気づくことが多かった」。

投球で苦しい時には腕や手首など小手先で微調整していたという右腕は「下半身をケガしてから、特に足から上につながる連動性、軸足の使い方、下半身の大切さに気づくことができた」。逆境を乗り越え、力に変えてみせた。

1軍投手陣の中で日本人最年長右腕の快投に指揮官は「祐輔らしい投球だった。今日みたいな投球をしてくれたら投手陣もピリッとすると思う」と目を細めた。エース大瀬良がコンディション不良で出場選手登録を抹消されている状況もあり、野村は「全員で戦っていきたい」と力を込めた。チームは1日で最下位から脱出。たくましさを増した背番号19がチームを引っ張っていく。【古財稜明】