必死に二塁ベースへ、頭から滑り込んだ。14日に支配下選手登録されたオリックス育成ドラフト6位の大下誠一郎外野手(22)は、新調されたユニホームをドロドロにした。この日、新しい背番号「40」のユニホームが到着したばかり。試合前練習から、2桁になった番号を付けて気合を入れていた。

3点を追う4回、無死から先輩の「ラオウ」こと杉本が中安打で出塁すると、大下も続いた。ファウルで粘った7球目。左腕松井の137キロフォークに食らいつき、右翼線へ運んだ。気持ちを前面に出して全力疾走。最後は二塁ベースに倒れ込むように飛び込んだ。一塁側ベンチに右拳を突き上げる。土埃にまみれる40番に向け、歓声、拍手が、どんどん大きくなっている。

登場テーマ曲は嶋大輔の「男の勲章」を選んだ。「自分らしいなと思ったんで」。オールドファンも喜ばせる22歳。1軍デビューから3試合連続安打中。キャラだけでなく、結果でもたくましさを増している。

15日楽天戦では歴史に名を残した。同点の2回1死一、三塁。カウント3-2からバットを振り抜くと、打球は左翼席に突き刺さった。プロ初打席で決勝3ラン。1学年下のエース山本とお立ち台に上がった。育成ドラフト出身者がプロ初打席で本塁打を放ったのは史上初のこと。緊張解消にガムをかんでも、足は震えていた。

外野手登録ながら一塁と三塁を守れる。体形からは想像しづらい? 柔らかいスローイングと正確性を買われ、日々奮闘している。新しいユニホームは、すでに泥だらけ。そんな懸命さが、見る人の心を動かす。【真柴健】