日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(51)が、交流戦を6連勝で締めたセ・リーグ首位の古巣阪神に対して、五輪ブレークまでの24試合で「2位を8ゲーム差以上離せ」と提言した。自身の体験も踏まえ、その条件を満たせば優勝確率は「80~90%」と断言。投打のキーマンに藤浪晋太郎投手(27)と佐藤輝明内野手(22)を挙げ、18日に再開するリーグ戦最初のカード、2位巨人3連戦(甲子園)がVを占う上で重要だとした。【聞き手=松井清員】

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18日にリーグ戦が再開する2位巨人との3連戦は、いきなり優勝争いを占う重要ポイントです。やるからには阪神も3連勝を目指すでしょうが、僕は1勝2敗でいい、3連敗さえしなければいいと思っています。3連敗ならゲーム差は4。1勝2敗なら6です。この差はすごく大きいし、4差なら巨人も一気に勢いづく。逆に阪神が2勝1敗や3連勝でもしようものなら…。当然、巨人は全部勝ちにくるでしょうし、阪神は凡プレー凡ミス厳禁で、3連敗しない戦いが重要です。

優勝争いのライバルは同率2位で打線が良くなっているヤクルトも圏内でしょうが、やはり総合力で巨人になるでしょう。優勝経験が豊富なチームで、片や阪神は誰1人優勝経験のない若いチーム。その差はすごくあるし、競った時の強さは巨人に分があると言わざるを得ません。でもその巨人は今、戦力が整っていない。整った時に、今から追い付くのはしんどいと思わせるゲーム差をつけておきたい。7月中旬の五輪ブレークまでの24試合で引き離したいゲーム差は、ずばり「8」以上です。僕自身、チームが2位以下の時、前半戦でつけられると厳しいと感じた数字が8差でした。球界では3差追いつくのに1カ月かかると言われます。いくら勝っても、相手も負けてくれないと、その差が縮まらないからです。

投手の優勝キーマンは藤浪でしょう。セットアッパーは岩崎や岩貞もいますが、何よりの強みはパワーピッチができること。時々荒れた投球もするけど、ハマった時の真っすぐは打てません。相手は力で抑えられるとシュンとなる。流れもガラっと変わり、味方は気勢が上がって次の回の攻撃に移れる。本人は悩んでいた時期もあったけど、中継ぎでは捕手のミットを目掛けて思い切り投げ込めている。自分と戦うのではなく、相手と戦えています。ただでさえ中継ぎ陣に疲れが見えて夏場を迎え、藤浪の爆発力にかかる期待は大きい。ああ最後は藤浪、スアレスかと、相手の反撃意欲を低下させられる存在です。

打のキーマンはやはり佐藤輝でしょう。藤浪と共通するのは、たぐいまれな力で試合の流れを変えられることです。佐藤輝の本塁打は球場の空気を変え、相手へのダメージを深めます。ルーキーのキーマンなんてかつてない事例でしょうが、それほど別格です。僕自身、彼の力を見誤っていて、当初2割2分、20本塁打ぐらいと予想していました。でも新人が開幕2カ月で5月の月間MVPなんて…。打率2割5分、30本塁打に上方修正させてください。いや、もっと上を行くかも知れません。今後、競った試合になればなるほど、藤浪や佐藤輝が持つ爆発力は勝敗を左右するでしょう。故障せず、どこまで今の状態を続けられるかです。

前半残り24試合で2位に8ゲーム差以上をと言いましたが、もちろん油断はできません。私が現役だった08年は実際、13差を巨人にひっくり返されました。チームは5割前後をキープしていましたが、巨人が連勝、連勝で負けなかった。北京五輪で矢野さん、新井貴、球児が抜けたことも響きました。でも自分たちの野球をしていても、相手が上回ることがある。当時マスクをかぶっていた矢野監督は、苦い教訓を胸に刻んでいるでしょうし、今年も勝てる時はいくらでも勝っておくことが大事です。特に五輪ブレークは約1カ月あるので好調維持が難しい。調整次第でコンディションが変わる可能性もある。この先突然、コロナ禍に見舞われる可能性もある。いつどこで何が起きるか分からないのが勝負の世界です。

ただ選手層も厚い今年のチーム状況を踏まえると、五輪ブレーク前に2位に8差以上つけておけば、優勝に大前進すると感じます。ずばり、その条件を満たせば、V確率が80~90%いくんじゃないですか。コロナが収束していないとビールかけはできないかもしれないけど、みなさん、心の準備はしておいてください。

◆東京五輪での野球競技 6カ国が参加して行われる。開催国の日本のほか、韓国、メキシコ、イスラエル、米国の出場が決定。22日からメキシコで最終予選が行われ、オランダ、米大陸予選で2位のドミニカ共和国、同3位のベネズエラの3カ国で最後の1枠を争う。本大会は7月28日に開幕し、開幕戦のみ福島県営あづま球場で、他の全試合は横浜スタジアムで開催する。1次リーグを経て、順位付けされた全6チームが8月1日から変則トーナメント方式のノックアウトステージに臨む。決勝は同7日。なお08年北京五輪では大会期間中もNPBの公式戦は行われたが、今年は7月19日から8月12日まで中断する。