日刊スポーツ東北版で、毎週木曜に楽天情報をお届けする「週刊イーグルス」。第10回は2日連続掲載の特別編。大村三郎ファームディレクター(FD、44)がファームの現状を、投打に分けて語る。今回は打者編。7月の注目選手には左手首の手術から6月30日2軍ヤクルト戦で実戦復帰し、1安打を放ったオコエ瑠偉外野手(23)を挙げた。【取材・構成=桑原幹久】

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-新外国人のディクソンが6月は5本塁打、13打点と好調

1軍も含めて、チームみんなで何とかしようとしている。フォームではなく、タイミングの部分を重点的にやっているが、いい結果が出始めている。最近、僕に心を開いてくれてきた感じがする。コーチングは信頼関係がないとダメ。英語の勉強を兼ねてディクソンとはコミュニケーションをとりにいっている。日本人選手にも同じだけど、前向きな話しか、しないようにしている。

-開幕から1軍にいた武藤が2軍で打率2割前半と打撃に苦しむ

今はもがいている。いろんなことを試している時期。レギュラーをとろうと思ったら、自分のフォーム、打ち方を取得しないと長持ちしない。いいバッターに話を聞くこともいいだろうし、どんどん聞いて、自分に合うものをピックアップして良くなれば一番いい。黒川と武藤には普通の19歳、20歳じゃなくて、常に上で結果を出せるように意識高く持ってほしいと思って接している。

-捕手の堀内(6月19試合出場、打率3割5分4厘)、外野手の小郷(同20試合出場、打率1割9分2厘)も実戦を重ねた

堀内は去年に比べて打撃がすごく良くなった。捕手に専念できていないところは申し訳ないが、マスクをかぶるとそこそこのリードをする。小郷はポテンシャルもあるし、性格もいい。ただ、考え出すと深みにはまる。守備も走塁もやらないといけないし、辰己、田中和より上にいかないと1軍にはいけない。

-ベテランの藤田(同16試合出場、打率3割7分1厘)も結果を出している

全ての面で若手の模範的な選手。試合前も練習後も、野球をやっていない時も若手とコミュニケーションをとってくれている。若手もうれしいと思うし、こっちとしては助かる。「聞いて盗め、見て盗め」とよく言うけれど、若手選手はみんな見ていると思う。

◆大村FDが選ぶ7月の注目野手 オコエ

左手首のけがからやっとゲームレベルまで来られた。リハビリ中に打撃フォームの矯正に取り組んでいたが、よく走って、下半身を強化していたのが目についた。打撃も守備もどう変わっているか注目したい。

石井GM兼監督のコメントにあるように、自己評価が高いことは僕も理解できる。ただ、素直な子で話していくうちにいろいろと言ってくれるようになった。まだ甘い部分はある。誤解はされやすいと思う。人間的にもプレーヤー的にも成長は必要。能力はある。どうやったら前向きにできるか僕もいつも考えている。

野球ができなかった悔しさ、やっと野球ができる、という思いをどう爆発させてくれるのか。ファームでレギュラーをとって、1軍でチャンスをもらって「よく打ってるな」と目立ってほしい。いろんな意味で注目している。

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先日、勝負の神が奉られる仙台の秋保神社に行ってきた。奉納するのぼりに「野球の神様に愛される選手を育てる」と願い事を記した。野球の神様に愛される選手とは「生まれもって愛される選手」「努力をして超一流へと愛される選手」の2通りあると思う。大谷選手は努力をしていると思うけど、生まれ持った体、能力にも愛されていると思う。イチローさんは、僕から見たら「天才が努力をしたら、そら勝てんわな」と思う。

身近で言えば福浦(和也)さん(現ロッテ2軍ヘッド兼打撃コーチ)。ドラフト7位、背番号70で投手から野手に転向して、2000安打を打つとは当時絶対に誰も思っていない。でも努力が実って今に至る。野球の神様に愛されていたと思う。みんなにチャンスはある。そういう選手をたくさん育てたい。