ソフトバンクは8日、長谷川勇也外野手(36)が今季限りで現役を引退すると発表した。9日にペイペイドームで会見に臨む。ソフトバンク一筋15年。13年には首位打者、最多安打も獲得したが、14年に右足首を痛めて以降はけがとの戦いだった。打撃をとことん追究する姿から「打撃職人」と呼ばれた男がバットを置く。

   ◇   ◇   ◇

長谷川が15年のプロ野球生活に幕を下ろす決断を下した。今季は主に代打の切り札として70試合に出場し、打率2割6分3厘、3本塁打、19打点。今月2日に出場選手登録を抹消され、そこから1週間足らず。工藤監督や球団関係者も驚くほどのスピード決断だった。

専大から06年大学生・社会人ドラフト5巡目でソフトバンク入り。3年目の09年に頭角を現し、143試合フル出場で打率3割1分2厘をマークした。13年には現在でも球団史上最多の198安打を放って最多安打、打率3割4分1厘で首位打者にも輝いた。ストイックに打撃を探究し、他を寄せ付けない空気感で練習に打ち込む姿から「打撃職人」とも呼ばれた。

14年9月の試合で本塁突入の際に右足首を痛めた。その後は最後までその故障に苦しみながら野球人生を送った。同年オフに患部の手術を受けたが、完治には至らず。17年にも同じ箇所を再手術した。それでも年間を通して満足にプレーできた年は少なく、故障後は16年に122試合に出場したのが最多で、それ以外のシーズンで80試合を超えることがなかった。

今季中盤からはさらに足首の状態が思わしくなく、治療を並行しながらプレーした。それでも長谷川らしく、今の体でできる打撃を追究しながら、もがき尽くしたが、結果は伴わなかった。8月末からは1カ月以上安打なし。「打撃職人」の限界だった。2日に出場選手登録を外れていた。

プレー面だけではなく、若手やチームに与える影響も大きかった。求められれば、来る者拒まずで親身になって助言した。昨年、巨人との日本シリーズでは凡退した際にヘッドスライディングで悔しがる姿が話題を呼ぶなど、1打席、1球にかける情熱は誰よりも強かった。最後まで求道者であり続けた男が、ついにバットを置く。【山本大地】

◆長谷川勇也(はせがわ・ゆうや)1984年(昭59)12月22日生まれ、山形県出身。酒田南-専大をへて06年大学生・社会人ドラフト5巡目でソフトバンク入団。08年に1軍デビューし、13年には首位打者、最多安打のタイトルを獲得し、ベストナインにも輝いた。通算成績は1232試合で1108安打を放ち打率2割8分8厘、76本塁打、434打点。今季推定年俸7000万円。180センチ、86キロ。右投げ左打ち。